A 上場企業の2017年3月期第3四半期決算開示が一段落した。ゼネコンの大手・準大手クラスは、7割もの企業が最高益というのには驚いた。営業利益は増益企業すべてが最高額を記録している。
B 最高益と言っても四半期開示が始まった06年度以降の数値だが、この10年間にはリーマン・ショックや民主党政権など「建設業冬の時代」が色濃かっただけに、最高益が相次いだのもうなずける。通期ベースではバブル期も含めることになり、最高益の企業は少なくなるだろう。
C ただ、ゼネコンの利益が高水準にあることは確かだ。その源泉となる工事採算性は大幅に改善されている。一昔前は完成工事総利益(工事粗利)率が5%台という社は相次いでいた。いまや粗利率10%以上が全体の7割を占めるから、利益率は倍以上にも跳ね上がっている。
D そもそも工事採算の改善は、採算重視の受注、資材・労務価格の安定化、追加・変更工事の認定拡大が背景にある。旺盛な国内建設プロジェクトに支えられ、ゼネコンの活躍の場が広がったことで、施主との関係性が変化したことも見逃せない。
B かつてはディベロッパー各社が最高益なのに、工事を担当するゼネコンの利益が上がらない時代があった。いまの建設マーケットは、買い手市場から売り手市場の色合いが濃くなり、ゼネコンの受注環境は好転した。それに加えて、建設物価の安定という追い風が吹いたのが足元の状況だろう。好環境は来期も続くという見方もあるが、労務や資材の価格上昇度合いによっては、利益幅が圧迫される可能性もある。
A 他分野の決算状況はどうだろうか。
E 設備各社も総じて業績は順調に推移している。電力系の電気設備工事大手5社の第3四半期をみると、受注は4社が伸ばし、3社が増収増益だった。大型再開発などが相次ぐ東京エリアはもちろんだが、全国的に受注を積み増している社もある。今後を見通すと、柱になっていた太陽光発電所工事の収束が確実視される中、それに代わる収益源をいかに確保するか、各社の戦略が注目される。
F 空調の上場6社は、5社が受注増、3社が増収増益となり、こちらも事業環境は明るい。ただ、首都圏の活況が全体をけん引しているが、企業の設備投資の手控えなどで、全国的に産業設備が伸び悩んでいる。世界経済情勢の不透明感に伴う日系企業の設備投資減衰は、海外比率の高い企業には大きな痛手だ。しかし、日本市場に残された成長の余地を考えると、海外事業の手は緩められない。いまは我慢の時なのだろう。
G 道路舗装上場8社の第3四半期は7社が減収となった。ただ、採算性を重視した大型工事の受注や、各工事での技術提案による生産性向上の取り組みなどで、営業利益は4社が増加した。
H 受注高は5社が減少となった。一方で、増加した3社のうち2社は2桁増と明暗が分かれた。官公庁からの大型案件の受注などが大きく影響した格好だ。製造販売部門では、アスファルト合材の需要低迷のほか、原油価格の変動で原材料価格が上昇傾向を示すなど、厳しい事業環境だったこともあり、半数以上で受注が減少した。ただ、利益面ではコスト削減などの取り組みなどが奏功し、複数の社で改善の傾向が見られた。
G 今回の決算発表にあわせて通期予想を修正した社もあった。堅めに見積もっていた期初予想を上回る受注増によって、売上高の増加を予想しており、利益率の改善も見込んでいるようだ。
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