築地本願寺(東京都中央区)の境内が今秋、ピンコロ石とカラーブロック、芝生を組み合わせた修景整備により、建築家の伊東忠太が設計した当時の姿によみがえる。インフォメーション棟と永代合葬墓(合同墓)も新たに設置し、より多くの人々に開かれ親しまれる寺院として、憩いと安寧の場を提供する。施工は松井建設が担当。現在、第1期となる参拝者用駐車場整備に先行して着手しており、今後、第2期も並行して進め、10月末の竣工を目指す。画像は完成イメージ。設計は三菱地所設計
今回の「築地本願寺境内整備並びに建物除却・新築・改修及び合葬墓設置工事」は、2015年11月に策定した首都圏宗務特別開教区伝道推進基本計画に基づき計画された。若い世代の宗教離れやライフスタイルの多様化が進む中で、誰もが気軽に訪れることができ、仏教を身近に感じながら心豊かに日々の暮らしを送るヒントや、終活など人生のラストステージを支える場としてもワンストップで対応できる環境を整える。
具体的には、同院のインフォメーション機能を集約するとともに、50席程度のカフェや多目的ホール、仏教書などを販売する物販コーナーを備えたS造2階建て塔屋1層延べ854㎡のインフォメーション棟と、RC造地下1階地上1階建て延べ359㎡の合同墓を境内の左サイドに建設する。
同サイドに現在点在する東京都指定の旧跡や石碑などは境内右側に移動・集約し、緑豊かな散策路を整備して観光客や参拝者の憩いの場とする。右サイドには参拝者用の駐車場も整備。車両の出入りを晴海通り側に限定することで、年間33万人に及ぶ来訪者の正門からの動線を円滑にし、安全性も高める。地下鉄築地駅から境内に直接入れる通路も整備する予定だ。
現在の境内 |
本堂に現在ある事務所の一部はロビーや参拝者対応のスペースに改修する。
これらの設計は三菱地所設計で担当。本堂への視線を妨げないよう、インフォメーション棟は高さを抑え、合同墓も礼拝堂からの眺望を意識したガラス屋根のデザインとしている。
施工に当たる松井建設の菅沼利幸所長は「安全、品質、工程いずれも失敗が許されない工事」と口元を引き締める。特に多くの参拝者や観光客が訪れる中での工事となるだけに、境内での歩行者の安全確保を最優先に考慮し、境内の工事区画なども細かく変えながらストレスや負担をかけないようにしていく考えだ。
装いを一新した境内の新たな姿と役割は、創建から400年を迎える節目の年に開かれる「報恩講」(11月11日-16日)で盛大にお披露目されることになる。
◆宗派超え親しまれる築地の“顔”
築地本願寺は1617年、京都・西本願寺の別院として、浅草・横山町に建立されたのを発祥とする。1657年の「明暦の大火」で焼失し、幕府が代替地として指定した八丁堀の海上に、佃島の門徒が中心となって海を埋め立て、地を築き、1679年に再建。それが「築地」の地名の由来ともなっている。その後、1923(大正12)年の関東大震災に伴う火災により再び焼失。現在の本堂は伊東忠太が設計し、松井建設の施工で34(昭和9)年に落成した。
仏教の発祥の地である古代インドの建築様式を独自の解釈で取り入れた外観と、伝統的な真宗寺院の本堂形式を融合した独特のデザインは、国内外から多くの観光客が訪れる築地の「顔」として、宗派を超えて広く親しまれている。2014年には外周の石塀や石造柱門とともに国の重要文化財に指定されるなど、その建築的な価値は高く評価されている。
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