2017/02/06

【現場最前線】騒音・粉じんを大幅軽減! 「クールカット」で進む富士重工群馬製作所解体工事


 清水建設が開発した解体工法「シミズ・クールカット」が、初めて全面採用された「富士重工業群馬製作所西本館建替えに伴う解体工事」(群馬県太田市スバル町1-1)で大きな効果を発揮している。粉じん量の90%削減、騒音の24%低減などを実現、地域住民への配慮を最重視する富士重工業の期待に応えている。2日、報道陣に現場を公開した。

 一般的な解体工法は、コンクリートを圧砕・破砕するため、現場はガラと粉じん量が非常に多く、破砕時の騒音・振動も大きかった。柱や梁を切断するブロック解体工法もあるものの、足場を設置してワイヤを対象物に巻き付け、ワイヤ切断時の防護ネットを張り、防護ボードの後ろから機械を操作してワイヤを引きながら切る方法で、ワイヤが切断すると非常に危険なほか、ワイヤの巻き付けや防護ネットの設置などに手間がかかった。
 シミズ・クールカット工法は、汎用の油圧ショベルにワイヤソーや冷却水ノズル、駆動装置、作業フレーム、把持装置で構成するアタッチメントを取り付け、ワイヤソーでSRC・RCの柱・梁を押しながら切る。把持装置で対象物を抑えながらワイヤで押すため、確実に切れる。ワイヤ切断時の危険もなく、足場や防護設備を設置する手間がかからない。切ったブロックをクレーンでトラックに載せるまで支えておく支持サポート治具も新たに開発しており、クレーンがブロックを運ぶまで次の切断を待つ必要もない。
 今回、解体している西本館(旧館・RC造5階建て塔屋1層延べ5113㎡、新館・RC一部SRC造6階建て塔屋2層延べ5823㎡)の場合、1ブロックを8tになるよう柱・梁をクールカットで切断、床版はロードカッター、小梁はコア抜きドリルなど部位にあわせて切断機械を選択した。粉じんは、破砕工法の10%程度まで抑えられ、風が強い日に粉じんが巻き上がることもない。騒音は85dBから67デシベルまで下がり「現場の外では、日常音にかき消されて、切断音が聞こえない」(印藤正裕常務執行役員生産技術本部長)という。破砕しないため振動も起きず、引き切りに比べても工程が少なく、工期を短縮できた。
 富士重工業にとっては、地域とともに事業を続けてきた地であり、隣接地での新本館建設時から騒音、粉じん、振動などへの十分な配慮を求めていた。今回の工法を採用したことで、「音もほとんど聞こえないのに、どんどんビルが小さくなった」と驚く声も近隣住民から上がっているという。
 作業所長の八幡孝行関東支店群馬営業所工事長は「大きなブロックをクレーンでつり上げるため、風の強い場所で予定どおり解体できるか不安もあり、切断時間やクレーンの運搬能力も考慮しながら効率的に解体するための計画作成に悩んだ。揚重機械が必要なためすべての建物に適用できるとは言えないが、実際、解体を始めると効果が大きく、画期的な工法だと思った」と話した。
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