2017/02/25

【浚渫工事ICT化】現場に近づく船舶のレーダー情報をリアルタイム共有! 安全性確保と生産性向上を両立


 「これがi-Construction(アイ・コンストラクション)の第一歩」と、りんかい日産建設の近藤功取締役執行役員土木事業部長は力を込める。同社が2014年に開発した船舶レーダーモニタリングシステムは現場周辺を往来する船舶をリアルタイムに把握する港湾工事の情報共有ツールだ。これまで創意工夫提案として現場導入の実績を積んできた。国土交通省直轄の浚渫工事でICT(情報通信技術)活用が本格化することを受け、技術提案による現場導入を加速させる方針だ。

 フェリーやコンテナ船などの大型船舶はAIS(自動船舶識別装置)を搭載しているが、500t未満の貨物船や小型船舶、漁船などには搭載義務がない。そのため現場の作業船は浚渫工事区域に近づく非搭載船を把握するため、船舶レーダーを積んでいる。
 現場では浚渫船を複数の作業船が囲むように船団を組む。モニタリングシステムは船舶レーダーの情報を関係者全員がリアルタイムに共有するために開発された。土木事業部の新谷聡技術部技術課長は「航行船舶の安全性確保と現場の生産性向上を両立できる」と強調する。
 そもそも船舶レーダーの画面は判別に一定程度の経験が求められる。システムはレーダーから船舶情報を取得した上で、データ処理によって船舶の向きや移動速度を把握し、移動予測も指し示す。より実態を分かりやすく見える化し、インターネットを介して現場関係者で供給できるようにした。さらに危険予知を重要視し、警報システムにも連動させた。
 船舶レーダーは作業船ではなく、あえて現場を一望している現場詰め所などの屋根に取り付ける。これまで作業船ごとに設置していたが、1現場1台で済むため、コストメリットも見いだせる。既に3現場に導入済み。中部地方整備局発注の名古屋港第3ポートアイランド築堤工事ではタンカー船への燃料詰込船を含め多くの船舶が往来したものの、現場では事前の状況把握ができ、作業効率の側面でも効果を発揮できたという。
 3月に導入する4件目の現場はこれまでの実績をもとにした技術提案が認められた。国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にもこのほど登録された。現場利用料は1件当たり約57万円。土木事業部の合田和弘技術部技術課課長は「i-Conの流れを受けて、システムの活用が進み、年間5件程度の利用を見込んでいる」と明かす。
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