2017/02/18

【現場最前線】アポロカッター工法で掘削! 大阪府道高速大和川線常磐工区開削トンネル工事


 「さらに掘削のペースは上がり、この春には到達できるだろう」と、大阪府道高速大和川線常磐工区開削トンネル工事を施工する鹿島・飛島建設JVの渡辺幹広所長は手応えを口にする。現場では本線につながる出口ランプ部トンネルを矩形シールドマシンのアポロカッター工法で掘削中。円形に比べ余堀り量を最小限に抑えられる矩形シールドだが、マシンの姿勢制御が難しい。近接する本線開削トンネル部の土留め壁に併走しながら、しかも下り勾配8%の地上発進も求められた。

 掘削距離は現時点で50mまで進んだ。これまでは日にセグメント1リング分を組むペースで進んできた。渡辺所長は「これからは2リングのペースを目指していく」と順調ぶりを明かす。発進時の土かぶりは厚さ1.5mだったため、より慎重に掘り進めてきた。矩形シールドゆえに掘削面は平らになり、円形シールドに比べると、地上部に影響を及ぼしやすいからだ。

アポロカッター掘削機構

 シールドマシンは断面の摩擦抵抗を考慮し、20mmほどオーバーカットしながら進んでいる。その隙間には通常のシールド工法で使われる裏込め注入に加え、沈下抑制充填材も投入し、地上部への配慮に万全を期している。発進立坑を覆う防音ハウスも、あえて周辺への日影を配慮して高さを最大5.5mほどに抑え、セグメント搬入などに使う120t吊りクレーンも消音タイプを採用した。
 アポロカッター工法の採用は鹿島にとって3現場目だ。初適用現場も経験した真鍋智副所長は「実は掘り進めながら姿勢制御を可能にするローリング調整が強み」と、工法の優位性を強調する。カッターヘッド、揺動フレーム、公転ドラムで構成する掘削機構は、ヘッド部が4分間で一回りする。矩形ゆえに姿勢精度がより問われる中、ずれへの対応には、マシンの傾きと逆側を少しオーバーランして掘削することで制御する。「大きく掘った方向にマシンが逃げていくようなイメージ」だ。
 上下左右の方向修正もシールドマシン内に組み込まれた32本のシールドジャッキと24本の中折れジャッキを使い、緻密に制御している。出口ランプ部のシールド掘進長さは225m。8%の下り勾配に加え、半径600mに湾曲しながら本線につながるため、マシンの姿勢を保ちながら微妙な方向修正も求められる難しさがある。「矩形マシンのコントロールという部分に、社内からも注目されている」と明かす。

1日にセグメント1リングを構築中

 既に開削で進めてきた本線トンネルは9割ほどが完了し、残る出口ランプ部の矩形シールド区間も順調に進んでいる。「実はまだ難しい工事が残っている」とは渡辺所長。本線と出口ランプの接続は本線躯体を横堀りし、新たにランプの受け入れ躯体を構築するが、地上部からはランプ外側への土留め壁が打てない。地中の高さ制限がある中、2次土留め壁を構築する必要がある。「これまで同じような地中切り開き工事を手掛けた実績がここでも生かせる」と力を込める。
 都心部では、道路立体交差や再開発プロジェクトの連結通路など地下空間構築に矩形断面掘削の需要が高まりつつある。鹿島はアポロカッターを含む矩形断面の掘削4技術を『バーサタイルボックス工法』と位置付けており、有効な技術として提案活動を強めている。渡辺所長は「ここで挑戦する地中切り開き工法のニーズは、今後さらに拡大するだろう」と先を見据える。

件 名:大阪府道高速大和川線常磐工区開削トンネル工事
建設地:大阪府堺市北区常磐町1~2丁目付近
事業者:大阪市堺市
発注者:阪神高速道路会社
施工者:鹿島・飛島建設JV
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