A 三菱地所の杉山博孝社長が社長交代会見で、大手町ビルヂング=写真=のリニューアルに言及した。このことをどう見ればいいのかな。
B 大手町ビルは東京・大手町地区を代表する建築物だけど、今後の対応についてこれまで明言してこなかった。杉山社長は、すべてのビルを建て替えるのではなく、サービスによって価値を高めることもあることを、リニューアルの理由の1つに挙げた。
C このビルの今後に外部が関心を寄せていたのは別の側面もある。東京メトロの千代田線、半蔵門線、丸ノ内線の駅・線路に面している。特に丸ノ内線はビル地下街と直結している。ただ、この条件が良すぎることが逆に、もし建て替えを選択した場合、地下鉄の構築物との関係で難条件になるのではとの見方が外部からあった。
D 東京都心の地下は特に、いくつもの地下鉄路線が交錯したり、電力・ガス・上下水道などのインフラ埋設物もある。当然すべてのインフラは高齢化するし、その対応が必要になる。だから難条件を克服する技術が需要・市場獲得のかぎになるかもしれない。
A 今後の実際のプロジェクトで難条件と言われるものはなにがあるのかな。
E 首都高速道路会社が計画している首都高速道路大規模更新事業のうち、3号渋谷線(池尻~三軒茶屋)は、かなり特徴的なプロジェクトだ。高速道路の橋脚基礎が地下にある共同溝や東急田園都市線と一体構造になっている。このため、メインとなる高速道路の床版更新工事などは2020年開催の東京五輪後になるが、地下鉄など地下構造物の補強工事は17年度から先行して進めるようだ。鉄道関係の工事は、鉄道会社に委託するのが一般的だ。ゼネコン対応となる地下構造物の補強工事は、東急電鉄からの発注になるだろう。
◆東京地下鉄の「駅周辺開発における公募型連携プロジェクト」にも注目
F 地下鉄と言えば、東京地下鉄が進めている「駅周辺開発における公募型連携プロジェクト」も、新しい取り組みだ。駅出入り口などを単独でバリアフリー化するのは、さまざまな制約から難しい。そこで、施設整備を検討している駅に隣接する土地・建物の所有者や開発担当者から、駅との接続を前提とした開発提案を公募している。対象は押上、根津、方南町など10駅。多くの問い合わせがあるという。
A 都内では大型再開発事業が一斉に動き出しているけど、再開発プロジェクトと地下鉄を結ぶ連結通路の構築も技術的に難しい工事になるということだね。駅周辺のオフィスでも建て替えに合わせて、同様の要求が広がってくるということか。
F 連結部はそれほど長くはないが、地上部とのかぶり厚が小さい上、地下鉄駅舎を運用しながら、通路の構築を進めるため、安全対策にも万全の注意が必要になってくる。開削工事で通路を整備できればいいが、道路をまたぐ場合もあり、場所によってはシールド工法が採用されるケースも少なくない。
E シールドマシンも一般的な円形でなく、矩(く)形タイプを導入する現場も出てきた。地下通路部の工事を取材したことがあるが、矩形マシンは円形より余掘り量を減らすことができ、都心部の地下空間構築には今後欠かせない技術になるとの印象を強く持った。
A 矩形シールドは円形と違い、掘削制御が難しいと言われる。矩形であるがゆえに、施工精度がより求められる。都心部地下の過密化が進む中、矩形シールドのニーズはますます高まるだろう。国内ではまだそれほど施工事例はないだけに、施工者は多くの実績を積みたいところだろう。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿