2016/08/19

【記者座談会】2017年3月期第1四半期決算出そろう 工事量増加、採算改善

A 上場企業の2017年3月期第1四半期決算が出そろった。ゼネコンは手持ち工事量の増加と工事採算の改善が鮮明に表れているね。

B 前期の受注が好調だったこともあって、大手・準大手ゼネコンの受注は高止まりするだろうと予想していたが、大手では鹿島の大幅な受注増に驚いた。年間受注目標は厳しめに見積もっていることもあり、第1四半期を終えて既に、達成率は44%に及ぶ。まさにスタートダッシュという感じだ。
A 大手の手持ち工事量は着実に増えているから、年間を通せば計画受注内に収まることになるだろうが、大成建設は既に2兆円に達しているように、各社ともプロジェクトの進捗をにらみながら、慎重な受注を続けていくことになるだろう。秋以降からは東京五輪関連施設なども工事が本格的に動き出す。今後はどれだけ効率的に消化していくかが勝負になるのでは。
C 手持ち工事量よりも、工事採算の改善に注目している。完成工事総利益(工事粗利)率は大手だけでなく、準大手も軒並み2桁台になった。受注環境の好転が下支えし、採算重視が数字として浮き彫りになったことは間違いない。この状況は当分続くから、ゼネコンの採算性はさらに向上していくだろう。
B 各社とも生産性向上を経営テーマに掲げている。工事採算の改善も、生産性向上策が実ったという声もあったが、実際は現場の自助努力が好採算の原動力に他ならない。利益確保ばかりにまい進するのでなく、この好機をぜひ生産システム改革につなげてほしいものだ。
A 設備工事会社はどうだったのか。
D 総じて電気、空調ともに受注は好調だ。都市部の再開発案件など、堅調な民間設備投資が背景にある。建築と設備が一括発注されることがほとんどの民間市場では、設備各社はゼネコンから工事を請け負う立場になるが、経営層は今後さらに本格化するゼネコンからの発注に備えている。なかには、手持ち工事量と自社の施工能力のバランスを考慮しながら受注活動を展開している企業や既に一部で受注を断らざるを得ない企業も出始めている。
A 道路舗装会社の状況は。
E 東日本高速道路東北支社の発注を巡る指名停止などの影響もあり、工事受注高は上場8社のうち、7社が減少する厳しいスタートとなった。各社とも官公庁工事の落ち込みを民間工事でカバーする動きが顕在化しているが、競争が激しくなると利益率の低下は避けられない。民間工事市場は企業の設備投資に委ねられているので、各社ともその動向を注視している。製造販売部門では2社が微増となったものの、6社が減少した。アスファルト合材の販売量は地方自治体の発注量に大きく左右されるため、公共投資の低調な推移が響いた格好だ。
A 建機メーカーはどうだろう。
F 全体的に苦戦している。紙面でも報じたが景気低迷が続く中国市場や円高などの影響で、グローバルに活躍する大手はそろって減収減益となった。
A 今後の明るい材料はあるのかな。
F 多くのトップは、都市や鉄道の整備が加速するインドを「成長が楽しみな市場」と話している。かつての中国ほどの成長スピードはないものの、新興国市場の需要を取り込めるかが1つのかぎになりそうだ。国内では、国土交通省が推進するi-Construction(アイ・コンストラクション)に本格対応するため各社が組織を整え始めた。先行するコマツに、他社がいかに追随するかが注目される。
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