2016/08/06

【担い手】体験ツアーで高校生に選択肢を 世田谷区「建設業人材確保支援事業」


 閑静な住宅街で、ジャージ姿の高校生がコンクリートの破砕機械で地面を掘削する。東京都世田谷区が実施した「建設業人材確保支援事業」の建設体験ツアーの一幕だ。7月27日に行われた土木現場の体験には、男子高校生3人と女子高校生2人の計5人が参加した。参加者のうち4人が普通科高校に通っており、体験ツアー前に建設業について質問すると、明確なイメージがつかめていない様子。区は、これまで建設業との接点がなかった高校生に、地元建設企業という選択肢を提案する。

 2年目となる建設人材確保事業では、高校生の採用にさらに力を入れている。高校生の採用面接など本格的な就職活動は9月からスタートする。しかし、夏休み中に職場見学をした上で、企業に応募する学生が多く、高校生を採用するには7月までに採用の体制を整える必要がある。そのため、世田谷区ではことし4月から、支援事業を人材派遣会社に委託し、夏に入る前に現場見学の準備を進めていた。

破砕機械で土をほぐす

 現場は、同区上用賀の道路舗装後の交通安全施設の復旧工事。用賀小学校付近の道路でガードレールの再設置や白線の塗り替え工事を行っている。この日は、ガードレールを再設置するため、舗装されたアスファルトをはがし、土を掘り返す作業などを行った。高校生たちは、コンクリートの破砕機械で土をほぐしたり、ダブルスコップで土を掘り返す作業を先輩社員の手ほどきを受けて体験した。汗をかきながら黙々と作業をし、社員から褒められると笑顔を見せた。

切り出したアスファルトを持ち上げる

 現場を提供した梶原建設で採用を担当している梶原匡弘常務統括事業本部長は「地味なイメージがあるかもしれないが、自分たちの住んでいる地域の安全を守る社会的意義のある仕事だ。頑張りに応じて評価されるし、若くても権限を持って仕事ができる」と、高校生に地元建設業で働く魅力をアピールした。同社は15年度から建設人材確保事業に参加している。15年度は区の事業経由での採用はなかったものの、それ以外で3人が入社した。「ハローワークで出す求人票に、区の人材確保事業に参加していると明記できる意味は大きい。求職者に安心感をもって応募してもらえるし、今後も継続して活用したい」と、区の取り組みに期待を寄せる。

ダブルスコップで土を掘り返す

 作業を体験した後に、入社5年目と3年目、3カ月目の先輩社員たちが高校生からの質問に応じた。高校生からは給与面や仕事のやりがい、資格取得についての質問が相次ぎ、先輩からは「やればやった分だけ上がる。入社5年目で班長になることだってできる」「仕事の結果が目に見えるので、友だちや家族に自慢できる」「必要な資格はその都度勉強して取得できる」などと、体験談を交えて答えた。
 体験後に感想を聞かれると、普通科の高校に通う女子生徒は「現場に入ったとき男性が多くて、女性がいると邪魔になるかと思ったが、説明を聞き体験して女性でも働けると思った」と述べた。別の女子生徒は「兄が造園業をしているので大変さは聞いていたが、実際自分でやってみると本当に大変だった」と率直な感想を述べた。男子生徒からは「体を動かせて仕事ができ、楽しかった」「達成感があり、興味がもっと湧いてきた」など前向きな意見が出た。
 建設体験ツアーは、7月21日からスタートし、8日までに計8現場で開催予定。高校生だけでなく、大学生や第2新卒者など未経験者にも建設業を体験する場を提供し、地元建設業に興味を持ってもらうきっかけをつくる。
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