貼るだけで新しい床になり、いつでも剥がして元に戻せる--。専門知識がなくても簡単に床がリフォームできる建材が登場した。大建工業の「吸着フローリング」はフロアの基盤材の裏に吸着材を貼ったリフォーム専用の床材だ。既存の床に吸着させるだけで板が固定でき、角を持ち上げるとスムーズに剥がれる。
「自分が知る限り、内装材店の職人は業界で一番の力持ち」。渥美匡喜住空間事業部三重工場内装開発課リーダーは内装建材の重さをそう表現する。一般的な幅30cm、長さ180cmの床材は梱包すると最低でも20㎞はあり、持ち運ぶだけで一苦労だ。吸着フローリングは重量にして2分の1程度、梱包も半分ずつに分け、運びやすくした。「開発課ではすべての建材を自分たちで施工してみるが、床材は自分たちでは持ち上げられないこともある。軽くて簡単なのが理想」と渥美リーダー。施工者目線でもう1つこだわったのは「剥がせる」というポイントだった。
裏面吸着加工 |
マンションリフォームでは、退去時に床を元に戻す義務があり、復元がリフォームでの必須条件だ。そこで考えたのが「吸着」だった。床材の裏に付いているアクリル系の吸着剤には、目に見えない微細な穴があり、床に置いて押しつけると穴の空気が押し出されて床に吸着される。床材を角から持ち上げると、簡単にはがすことができる。
施工イメージ |
開発の背景にあるのは、職人の多能工化だ。従来の床施工には、床材が重なる部分「さね」を組み合わせ、接着剤を塗って釘を打つ工程があり、専用の釘打ち機械が必要となるため、専門の大工でなければ施工はできなかった。しかし、リフォームで壁を修理した左官職人が、ついでに床も交換してほしいという顧客の要望を受けることもある。そんな時、大工の技術がなくても施工できる床材があれば、職人の1棟当たりの収入アップにも結びつく。カッターナイフで切ることもでき、さねもない「吸着フローリング」には、そうした需要に応えた側面もある。
「吸着力が強いので、剥がれたり動くことはない」と渥美リーダー。展示やオフィスの小規模な模様替えの需要が見込まれる。特に一般向けのリフォーム市場は消費者の“やってみようか”というモチベーションが反映されやすい。工期設定も不要で、近所に工事音で迷惑もかからない床材があれば、潜在的な需要の掘り起こしになる。
吸着フローリングは厚さ4mm、幅150mm、長さ900mm。価格(税込み)は1.62㎡(12枚)分で1万2000円。
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