2016/08/26

【清水建設】安政江戸地震の震源モデルと地震動を再現! 震源は千葉県北西部だった


 清水建設は、資料が残る中で最も大きな被害をもたらした首都直下地震と言われる1855年安政江戸地震の震源モデルと地震動を再現することに成功した。千葉県北西部のフィリピン海プレート内の深さ60㎞を震源に設定した。短い周期の大きな地震が短時間発生する直下型特有の地震波形を再現しており、より再現度の高いデータによる地震応答解析や免震・制振装置実験などが可能となる。画像は安政江戸地震の首都圏の震度分布図。★印は震央

 安政江戸地震は、マグニチュード(M)7前後、都心の最大震度6強で歴史資料上、都心部に最大の被害をもたらした。これまでに歴史資料などを元にした震度分布図は作成されているものの、震源やメカニズムには諸説あり、首都圏と広域を対象とした地震波形を推定した研究結果はなかった。
 同社では、文部科学省の科学研究費補助金事業「巨大地震の長周期地震動による超高層住宅の生活継続プランの構築に関する系統的研究」(代表者・川瀬博京都大教授)に参加し、安政江戸地震の震源・地震動を検討した。同地震の震度分布の特徴は、東京都東側の湾岸沿いが最も震度が高く、埼玉県北部から横浜方面にかけて弧を描くように震度が高くなっている。研究の結果、2005年7月23日に発生した千葉県北西部地震(M5.9)の震度分布が、安政江戸地震の特徴と酷似していることから、千葉県北西部の震源断層を含む大断層面を震源断層と想定し、2カ所の強震動生成域を含む震源モデルを設定した。
 その後、千葉県北西部の観波を使って経験的グリーン関数法で強震動予測と震度分析を繰り返し、歴史資料上の震度分布図を最も再現できるモデルを見つけた。震源・地震動を再現した研究結果は複数あるものの、都心部を震源としており震度分布が歴史資料を元にした震度分布図と合わなかったり、千葉県北西部を震源としているものの推定震度が小さいなど、歴史資料上の震度分布図の再現度が低かった。
 モデルでは、千葉県北西部のフィリピン海プレート内の逆断層(長さ36㎞、幅27㎞)を震源断層とし、震源位置は断層の中央部南よりの深さ60㎞付近に設定している。この結果、推定地震動は、地震発生直後に周期1-2秒のパルス波が一気に立ち上がる直下型地震特有の波形となった。
 この研究結果によって、より再現性の高いデータを使った建物設計時の地震応答解析が実施できる。短周期の波形は、中低層の建物に与える影響が大きく、首都圏の半数の超高層建築物の固有周期(1.5-2.5秒程度)にも近いため、今後の地震対策の検討にも有効活用できるとみられる。
 今後、超高層建物内の被害推定や制振ダンパーの研究など、「巨大地震の長周期地震動による超高層住宅の生活継続プランの構築に関する系統的研究」の参加者が使用できるようデータを提供する。
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