2016/08/23

【新国立競技場】「木と緑のスタジアム」、完成予想図公開! 12月に本体着工へ



「杜(もり)のスタジアム」として、歴史ある神宮の緑をつなぎ、100年後を見据え、大地に根ざす「生命の大樹」として市民に開かれたスタジアムを創出する。2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場整備事業は現在、実施設計に入っている。基本設計の完成に伴い、日本スポーツ振興センター(JSC)が新たな完成予想図などを公開。大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVが提案したコンセプトはそのままに、選手更衣室などの細部を改善した。今後は、予定どおり11月までに実施設計をまとめ、12月に本体着工する。19年11月の完成を目指す。工事費は約1490億円を見込む。
 新国立競技場は、S一部SRC・RC造地下2階地上5階建て延べ約19万4000㎡の規模で、制振構造を採用。観客席数は五輪時に約6万8000席で、将来約8万席に増設できるように計画している。直接基礎を採用し、建設面積は約7万2400㎡。

◆軒庇の水平ラインで陰影ある外観を形成

南東より鳥瞰イメージ。ミドリに包まれ、周辺の自然と調和した新しいスタジアム

木と鉄のハイブリッド屋根構造。木の空間で観客席を包み込む内観イメージ。
競技者の最高の力を引き出し、観客と一体感のある空間を創出する

 コンセプトは、「木と緑のスタジアム」。神宮外苑の緑など、周辺環境との調和が大きな特徴の1つだ。最高高さは49.2m。50m以下に抑え、景観になじむように配慮し、軒庇(ひさし)の水平ラインを強調して周辺の木々と調和する陰影のある日本らしい外観を形成する。木の集成材と鉄骨トラスを組み合わせたハイブリッド屋根で伝統的な「和」を表現する。屋根構造に木材を使い、日本の伝統デザインを取り入れたスタジアムを世界にアピールする。植栽を施し、日本の気候風土にあった深い軒庇によって日射を遮る。5階に「空の杜」を設け、1階の「大地の杜」とつなぎ、開かれた施設を形成する。

◆風や雨水を生かし緑と水の環境創出


渋谷川の「せせらぎ」を再現する

 「環境共生型スタジアム」もコンセプトの1つ。卓越風を生かした「風の大庇」は、地域の風の特性を分析し、適切な風環境をスタジアム内につくる。雨水を利用したせせらぎなど、外苑とつながる緑や渋谷川の記憶を継承し、緑と水の環境をつくり出す。観客席を1層スタンドに多く配置した大地に近いスタジアムは、円滑な避難を可能にする。

前の人が立ってもフィールドが見える車いす席内

 また、「臨場感と見やすさ」「競技者の力を引き出す」点を重視。360度連続したすり鉢状の3層構造のスタンド構成によって、安全と見やすさ、臨場感を共存させる。さまざまな人のアクセスに配慮し、安心して楽しめる世界最高水準のユニバーサルデザインの施設を目指す。
 充実した選手エリアと専用動線によって、最高のパフォーマンスが発揮できるアスリートファーストの環境を整備する。
 このほか、片持ち形式のシンプルな屋根や、徹底したユニット化、工場製作によって高所作業を減らすなど安全性を高めるとともに、コスト、工期の縮減につなげる考えだ。

◆選手、観客ともに最高水準の舞台

楕円形に変更した選手更衣室のイメージ

 基本設計は、スポーツ団体や障害者団体などの要望をもとに、1階にもトイレを加え、第2層の観客席の車いす席を分散配置し、さまざまな角度から観戦できるようにした。また、四角だった選手更衣室を楕円形に変え、選手の視線が中央に集まりやすくしコミュニケーション性を高めている。
 新国立競技場整備は、設計・施工一貫方式によるWTO(世界貿易機関)対象の公募型プロポーザル(設計交渉・施工タイプ)で、昨年12月に優先交渉権者として大成建設JVを選定、ことし1月19日に事業協定締結後、29日に設計委託契約を結び、基本・実施設計に入った。

更地となった建設地

 また、周辺整備は、建設地にあった日本青年館の解体を昨年末に終え、現在は大成建設で下水道千駄ヶ谷幹線敷設工事、国立競技場関連施設地下躯体取り壊し等工事、明治公園橋等取り壊し工事を10月末までの工期で進めている。今後のスケジュールは、12月の本体着工に向けて、10月から準備工事を予定している。
 建設地は、東京都新宿区霞ヶ丘町10-1ほかの敷地約11.3ha。
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