2016/08/20

【現場最前線】無人化施工で2次災害を防げ! 熊本地震で斜面崩壊の阿蘇大橋地区


 熊本地震により、阿蘇市の阿蘇大橋地区で、長さ約700m、幅約200m、崩壊土砂量約50万m3の大規模な斜面崩壊が発生した。国土交通省九州地方整備局は、頭頂部に残る大量の不安定土砂の崩落による2次災害を防ぐ対策工事を進めている。施工は熊谷組が担当している。

 同工事は、斜面下部に不安定土砂を受け止める上下段の二段構えの土留盛土を設置した上で、頭頂部の不安定土砂を落として取り除き、その後に法面対策工を実施する。5月5日着工し、上段の土留を先行整備している。無人化施工を活用し、バックホウ6台、キャリーダンプ4台、16tブルドーザー1台、カメラ車3台の計14台が稼働。定点カメラは20台以上設置している。
 操作室は安全面に考慮して、光ケーブルを敷設し現場から1㎞程度離れた場所に設置した。とは言っても目の前の山肌も土砂崩れの跡がある。いざというときに操作室ごと避難できるよう操作室のコンテナは2分割できる仕組みとなっている。オペレーターは雲仙普賢岳の復興現場などを経験した熟練者たちだ。
 一方、頭頂部の不安定土砂は、斜面に沿って張設したワイヤーに斜面上でも稼働できるよう改良したバックホウをつり下げて掘削する。勾配は45度以上もあるという。アンカーを設置する木などの支えが少ないため、丸太約20本を埋め込むことにした。重機は200m程度離れた場所から目視と取り付けたカメラにより遠隔操作する。


 国道57号から標高差300m程度ある頭頂部まで資機材は空輸した。8日にはバックホウ0.15m3級3台を分解して運び、8月下旬にはバックホウ0.25m3級の重機も追加配備する。重機は頭頂部で組み立て、試験施工し着手に備える。燃料やボーリング機材、作業員などは崩壊法面の両脇に設置したモノレールで運ぶ。
 九州整備局熊本地震災害対策推進室熊本分室の野村真一総括(河川・砂防)は、「避難指示が出る中での作業で安全面には神経を使った。地盤は阿蘇地区特有の黒ボク土で、雨が止んでも土壌の状態を見極めてからでないと着手できない。作業しても土をかき乱すだけで手戻りが増える」と作業の難しさを語る。余震や雨が続き6月は10日程度しか稼働できなかった。ただ、7月は稼働率75%程度と作業ペースは上がっており、熊谷組九州支店阿蘇無人化作業所の長束聖一作業所長は「順調になってきた。目の前の作業に一所懸命取り組み、1日も早く復旧させ地元の期待に応えたい」と意気込みを語る。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【現地ルポ】専門誌記者が見た福島第一原発の「凍土遮水壁」【記者コメ付き】 経済産業省と鹿島は、東京電力福島第一原子力発電所で実施している凍土遮水壁実証試験事業を公開した=写真。公開されたのは、4号機建屋西側に設置された小規模凍土遮水壁。遮水効果や耐久性など凍土方式による事業効果を確認するため設けられた10m×10mの実証施設だ。45本の凍結管が埋め込まれた実証区画内の土を削るとうっすら霜が降り、しっかりと凍っていた。  写真は報道陣に公開された凍土遮水壁実証実験(16日、福島第一原子力発電所・代表撮影)。 … Read More
  • 【ルポ!】2013年の洪水調節回数は平均年の1・8倍 ダムが救った数兆円 大型の台風や低気圧により、記録的な大雨が列島を襲った2013年。全国各地で水害が発生したが、それは可能な限りの軽減が図られたものだった。要因の1つは、ダムの洪水調節機能がフル稼働した結果で、ダムの効果や必要性が再認識された年になったとも言える。仮にダムがなければ、下流に位置する市街地の大浸水などにより、全国で数兆円規模の被害が出ていたとみられている。写真は台風18号の時の日吉ダム。  ダムは洪水の一部を貯め込むことにより、下流河川… Read More
  • 誰よりも早く最前線へ!! 九州北部豪雨・現場ルポ 14日午前、国道57号を熊本県阿蘇市に向けて車を運転中、同市内全域に避難指示を告げるエリアメールが携帯電話に入った。消防車の放水を直接当てられたような豪雨に恐怖を感じながら、徐行運転を続け、熊本県建設業協会阿蘇支部を目指した。窓の外を見ると、山から大量に流れ出る水によって道路は川と化し、泥土や木を流出させている。同日早朝、支部の災害対策本部は、復旧作業に当たっている会員各社の作業員に対して活動の中止を告げた。  写真は土砂が押し寄せた阿… Read More
  • 【本】避難所として機能するには 『鉄骨置屋根構造の耐震診断・改修の考え方』  東日本大震災は、津波による被害があまりにも大き過ぎたため、そのほかの被害は目立たなくなってしまった。しかし、次の災害に備え、同じ轍(てつ)を踏まないようにするには、被害の実態と原因の究明は不可欠だ。  本書が取り上げている鉄骨置屋根構造は、RC造の柱などに鉄骨の屋根が載っている施設で、体育館や公共スポーツホールなどに採用されている。こうした大空間の施設は、災害が起きれば避難所に使われることが多い。東日本大震災では、揺れによって鉄骨の屋根… Read More
  • 【台風被害ルポ】伊豆大島で砂防えん堤が災害を防いだ!  10月16日、伊豆大島(東京都大島町)で発生した台風26号による土砂災害は、多大な人的・物的被害をもたらした。しかし、4つの「砂防えん堤」が土石流を食い止め、より大きな被害を防いだ事実は、あまり知られていない。一方、東京建設業協会(近藤晴貞会長)は被災直後から、東京都の要請を受け、資材支援だけでなく、建設機械とオペレーターを派遣。人命救助とがれき処理作業がいまも続く。伊豆大島のいまをリポートする。 ◇東建が物資・建機・人材支援  … Read More

0 コメント :

コメントを投稿