2016/08/12

【深谷組】4月から実施の週休2日制 職人直用の会社が見据える五輪後の業界





 2020年の東京五輪を控え、社会保険未加入問題や人材確保・育成など、建設業界が対応すべき課題は多い。その取り組み次第で五輪後の業界の有り様も変わってくる。こうした状況下、とび・土工事の専門工事業者として、職人を直用する深谷組(本社・さいたま市、深谷和宏社長=写真)は4月から週休2日制を導入した。深谷社長は「働き手不在による建設産業の疲弊、他産業に流れる人材を食い止めるためにも、週休2日制の取り組みは大事。実現するには取引企業、協力会社などの理解・協力が必要になる」と力を込める。

 同社はこれまで社会保険加入、アスリート採用などによる人材確保・育成、月給制などを実現している。これらは自社の方針として自力で対応できるが、次のステップとなる週休2日制は、ゼネコン、1次下請企業の理解・協力が不可欠となる。理解を得るため、すでに取引先の会社、現場回りを行った。中村真悟取締役執行役員工事部長は「五輪後を見据え、いまから対応する必要があることを伝え、取引先にはおおむね理解していただいたが、現場からは土曜日勤務の要請は強い」と語る。
 基本的な要望事項として▽工程をウイークデーに組んで土・日曜日を休日とすること▽緊急の場合は土曜日も対応可能--を伝えている。具体的には「延べ30人必要な仕事の場合、5人で6日かかる仕事を当社は6人で5日で仕上げることを提案している」という。こうした提案について深谷社長は「現状では会社の利益、職人の給料などを考えれば厳しい部分もあるが、職人を直用する会社として若年者の新規入職に焦点を当てた場合、工程や生産性のあり方などをゼネコンに発信していかなければ先は見えてこない」と強調する。
 日給制が定着している専門工事業界で、東京五輪に向けて繁忙期を迎えるゼネコン、1次下請企業が週休2日制にいかに対応していくか。深谷社長は、東京五輪に伴う大型プロジェクトで職人を確保できても「業界が最重要課題とする新規入職者を増やすことはこのままでは難しい。職人を直用する会社とそうでない会社ではおのずと意識に温度差がある」と現実問題を指摘する。
 土工は縁の下の力持ちとして現場を支える要素が強く、地位向上の必要性を指摘する業界関係者も多い。こうした観点からも深谷組の週休2日制の取り組みは、建設業全体の人材確保・育成の在り方を考える上で一石を投じている。
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