建築家、大江宏の初期の代表作であり、モダニズムと日本の伝統様式を高い次元で融合した名建築として知られる法政大学の55、58年館。総ガラス張りの明るく開かれた施設は、戦後の都心キャンパスのモデルともなった。その中で55年館の511教室は、750人を収容できる大教室として、長年にわたり幾多の学生が学び、大学の歴史を刻んできた。建替工事に伴い、1日から始まった解体工事に先立ち、7月29日にはフェアウェルイベント「GOOD BYE“511”」が田中優子総長や、大江宏の長男でもある大江新名誉教授ら同大学関係者が東京都千代田区の市ケ谷キャンパスに参集して開かれ、別れを惜しんだ。
田中総長は511教室について「外に開かれた場所であり、さまざまな議論が行われ、ぎりぎりまでものを考えてきた象徴の場だった。とことんまで考える時間と機会を与えてくれてありがとう」と語り、大江氏は「内の形がありのままに外に出てくる建築であり、姿、形、構造、仕組みが隠さず表れている。力がどう流れて支えているのかはっきり分かるのも特徴だ。この空間で同じ時間を過ごす最後の機会となる。ぜひ記憶に残してほしい」と呼びかけた。
29日に開かれたフェアウェルイベント |
建替工事は2014年3月から大成建設の施工で進められ、9月には新校舎「富士見ゲート」が完成、秋学期から使用開始となる。引き続き南棟(仮称)建設のため、511教室とカリヨン、屋外階段棟を17年4月までに解体する。南棟は同年5月から建設に着手し、19年4月に供用を開始する。これを待って55、58年館の解体工事に入る。全体完成を迎える21年1月には、跡地は一体的な広場空間として整備される。新校舎は2棟総延べ約2万2000㎡。設計は日建設計が担当した。
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