2016/08/29

【ニコン・トリンブル】過積載にサヨナラ! バックホウが積み込みながら土量計る 『LOADRITE』


 「この3カ月余りで30台ものバックホウに装着した」と、測量機器メーカーのニコン・トリンブルで技術営業を担う柿本亮大氏は手応えを口にする。同社が、残土をどれだけ積み込んだかをバックホウのオペレーターが作業しながら確認できる荷重判定システム『LOADRITE』の販売を始めたのは1年ほど前。導入を決めた機械土工の専門工事会社からは「法令順守と生産効率を同時に実現できる」と、その効果が口コミで全国に広がりつつある。

 着々と建設が進む新東名高速道路の、ある工事現場では、造成作業を担う丸磯建設(東京都品川区)がこのシステムをフル活用している。トータルで25万m3に達する残土は、現場から75㎞m離れた処分場まで10tダンプを使って運び出されている。ダンプの積載量は10tといっても、10tぴったりの残土を積み込めるわけではない。ダンプ荷台のベッセルは車両によって重さが異なるため、1台に積み込める残土は8.5tから9.2tまで幅がある。積載量ぎりぎりで運ぶことが利益確保につながるだけに、現場で残土を積み込むバックホウのオペレーターの腕が試される。
 過積載に慎重になれば積載量は落ち、現場によっては月額にして数100万円単位の減収になるケースもある。目一杯まで積み込みたくても、雨が降れば土砂は重くなり、天候も含めた柔軟な対応が求められる。常設の重量計を導入する現場もあるが、費用はかさむため、簡易版を取り入れるケースも少なくない。ただ、読み取り誤差が大きくなり、より正確な数値が導きにくい課題があった。

オペレーターはコントロールボックスを見て重さを確認

 LOADRITEは、バックホウの動作に基づき、バケットに積み込んだ量を自動計算する。柿本氏は「計測した95%はプラスマイナス3%の範囲に納まるほどの正確さだった」と胸を張る。アームやブームには圧力センサーが取り付けられ、バケット内の土砂の重さを瞬時に推定する。オペレーターは運転席の横に取り付けられたコントロールボックスで確認しながら積み込み作業が行えるため、重量計で計り直す手間もない。
 実際の造成工事現場で専門工事会社3社に対して100台を目安にサンプリングしたところ、LOADRITEを活用した社では6割強のダンプがターゲットに設定した9.2tの積載量を実現した。残り2社はオペレーターの能力によって投入量にバラツキが生じたほか、生産効率も低かった。「オペレーターが自らの技量を推定量として確認できる見える化の効果によって、作業の効率化も図れた」(柿本氏)

LOADRITEの構成

 ニコン・トリンブルは丸磯建設と共同で、LOADRITEの情報をインターネット経由で確認できるシステムを構築し、国土交通省のNETISに申請中だ。これを活用すれば、発注者側は日々の作業結果を電子メールで確認でき、元請企業は法令順守のデータとして蓄積できる。専門工事会社にとっても自ら生産効率のデータを把握できる。オペレーターからは自らの成果を立証できることから「安心を得られるツールだ」との声も上がる。
 欧州や豪州では既に数千台の建設機械に採用されているヒット商品で、満を持して日本での販売となった。バックホウ中心だが、ホイールローダーやベルトコンベヤーにも対応するだけに、潜在需要は大きい。主要レンタル会社の取り扱いも始まり、バックホウであれば全国で借りられる体制も整った。
 現時点で導入に踏み切ったのは国内初導入の丸磯建設を含む10数社。柿本氏は、国土交通省のi-Construction(アイ・コンストラクション)施策を追い風に建設現場へのICT機器導入の機運が高まっている中で「年内までに設置台数で100台を超えてくるだろう」と手応えを感じている。
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