2016/08/21

【建築】竣工は1カ月前! 耐震改修で熊本地震を乗り越えた九州学院の1号館


 熊本地震によって熊本市内の学校でも多くの校舎が被災した中、創立100年を超える熊本市中央区大江の九州学院は、1号館の耐震補強工事が間に合い、何とか無事に1学期を終えることができた。村上洋也事務長は、「1号館が被災していれば、普通教室が足りず授業が行えなかった可能性がある。耐震改修して本当に良かった」と語る。

 九州学院は、中学と高校を合わせ36クラス約1400人が学ぶ。1号館の規模は、RC造4階建て延べ5145㎡で、1962年に竣工した。普通教室21室のほか、情報教室、AV教室などを備える。2012年度に実施した耐震診断でIs値(構造耐震指標)が基準を大きく下回ったため、建て替えか耐震改修かを検討し、耐震改修に決めた。
 設計・監理は游建築設計事務所(熊本市)、施工は松尾建設が担当。15年5月19日に着工し、16年3月15日に竣工した。
 施工に当たっては、まず仮設のプレハブ校舎を建設。柱の補強は、鋼板と繊維シートで覆うハイパー耐震工法を採用した。また、外壁に新たにPC製の壁を設けるアウトフレーム補強も行った。強度を高めるため、開口部となる窓を数カ所塞いでいる。村上事務長は、「渡り廊下のつなぎ目にひび割れはあったが構造に影響は無かった」と耐震補強の効果を話す。
 ただ、2号館は損傷が激しく建て替える。現在、解体工事を進めており、埋蔵文化財調査を実施した後、着工する。17年3月竣工を目指す。3号館は1、2階が無事だったため、3階のホールを改修する。4号館は建て替えか改修かを現在検討している。
 また、文化庁の有形登録文化財に熊本県第1号として指定された礼拝堂のブラウンメモリアルチャペルも梁にひび割れが生じたため改修する。チャペルの施工は坂口建設(熊本市)が担当の予定だ。
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