2016/08/20

【東京道路清掃協】五輪おもてなしも災害復旧も 地域の“守り手”が支える道路ネットワーク


 地域の守り手は、工事を主戦場とする建設企業だけではない。事故の原因にもなり得る落ち葉やごみを取り除く道路の清掃も“守り手”である建設企業の仕事だ。道路清掃は夜10時から朝6時までという夜間作業が基本となる。街が眠っている深夜帯だけに人目につくことは少ないが、経済活動の根幹である道路ネットワークはこの地道な仕事に支えられている。写真はロードスイーパーへの体験試乗に喜ぶ見学者

 東京23区における都道を中心に道路清掃を担っているのが『東京道路清掃協会』(蛭田信宏会長)だ。1964年、東京オリンピックを契機とする高度経済成長期に自主団体「東京道路サービス協会」として設立された同協会は、74年に現在の名称に変更、公益法人改革に伴い、2012年に一般社団法人として再スタートを切った。
 成熟都市と言われるまでに発展した東京で、人びとの快適な生活環境を支える道路清掃は、社会資本の維持保全の一翼を担う「縁の下の力持ち」とも言うべき存在。会員企業は地域の守り手として道路の美観や安全性を保つ都市にとって欠かすことができない事業を展開している。
 道路清掃は、先行車、散水車、ロードスイーパー、ごみ運搬車の4台で1つのチームを編成する。各車両や作業員が連動して作業に当たる。
 特にロードスイーパーの運転技術は「1年や2年で熟達するものではない。歩道や中央分離帯の際(きわ)までブラシをかけるには相応の技術がいる。ロードスイーパーを自在に操る熟練の技術力を持つにはそれなりの時間がかかる」(米沢彰三専務理事)という。
 協会が作成している育成マニュアルに沿って各社がそれぞれ人材育成に取り組んではいるが、会員企業にとっても、担い手であるこのオペレーターの育成は喫緊の課題になっている。
 オペレーターの技量が仕事の質に直結することや、オペレーターの育成・確保に苦労している点は豪雪地帯における除雪業務の構図にも似ている。

道路清掃の実演に興味津々

 課題である人材の確保へ、その足掛かりとも言える取り組みも積極的に進む。東京都道路整備保全公社(横溝良一理事長)が主催する“夢のみち2016”親子体験ツアーとのコラボレーション企画として、1日に北区にある王子自動車教習所で開催したロードスイーパーへの体験試乗がそれだ。
 夏休みを迎えている小学生など約50人の親子が参加した体験試乗は大好評。普段はあまり目にすることのない“働くロードスイーパー”に乗った子どもたちがとびきりの笑顔をみせていたのが印象的だった。
 「(体験試乗によって)道路清掃という仕事に興味を持ってもらうことが1つの狙い。1人でも多くの子どもたちが、大きくなったら道路清掃の仕事に就きたい、そう思ってもらえたらうれしい」(米沢専務理事)。

■東京マラソンコース おもてなしの心で清掃


東京マラソン前夜にボランティアで清掃

 ワールドマラソンメジャーズの1つに位置付けられるなど世界的な大会となった東京マラソンへの貢献として、大会前日の深夜にコースと沿道の道路清掃をボランティアで行っている。07年の第1回大会から継続して取り組んでいる同協会の恒例行事だ。
 世界中から集まってくるランナーに「世界一美しい快適な道路を」と、おもてなしの心で協力しているという。
 しっかりメンテナンスされた路面(マラソンコース)は世界に誇れる東京の財産。その一端を担っているのが、東京道路清掃協会の会員企業だと言っていい。

■伊豆大島土砂災害復旧に協力

伊豆大島の土砂災害にロードスイーパーを派遣

 13年3月に東京都建設局と「災害時等における情報収集業務等に関する協力協定」を締結した。作業中に道路の陥没などを発見した際、速やかに行政に連絡する平常時の対応だけでなく、首都直下地震など大規模地震への防災対応も重視する。
 仮に作業時間帯である深夜に大規模地震が発生した場合は、現場の最前線に立つ建設企業として即座に被災状況の収集に走る。この防災への意識の高さは、13年10月に発生した「伊豆大島土砂災害」の復旧活動への会員企業の派遣など、実際の成果となって都内の防災を支えている。
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