2016/08/21

【現場の逸品】業界初のi-Con対応CADで設計段階の取り組みに先駆 川田テクノシステム


 国土交通省のi-Construction(アイ・コンストラクション)施策を追い風に、建設現場のICT(情報通信技術)活用が一気に高まりを見せ始めた。直轄工事では施工段階の対象工事が動き出したが、設計段階の取り組みはまだ始まっていない。「今秋にも動きが出てくるのではないか」と先を読むのは、川田テクノシステムで技術営業を担う尾畑圭一氏。ソフトウエア業界では先駆けとなる、道路設計向けのi-Con対応CADを市場投入した。

 直轄工事では、2016年度に410件を対象工事に適用する見通し。これらは施工者自らが起工測量を行い、そこで得た3次元データを使ってICT建機などを活用する流れになる。そもそもi-Con施策は測量から設計、施工までの一気通貫で3次元データを活用する流れを前提にしており、川上段階からデータが引き継がれ初めて生産性向上の効果が見いだせる。
 3次元設計データの交換標準フォーマットとして国土技術政策総合研究所が開発を進めてきた「LandXML」の最新バージョン1.2は3月末に公開された。土木設計関連のCADベンダー各社は最新LandXMLに自らの製品を対応させようと、システム開発を急いでいる。
 「既に前バージョンの1.0に対応済みだったことが大きかった」と尾畑氏が明かす。同社が道路設計専用CAD『V-ROAD』と土木汎用CAD『V-nasClair(ヴィーナスクレア)』それぞれでi-Con対応のアドオン製品を販売したのは6月に入ってから、業界に先駆けて一手を投じた。

全国20カ所で開催中の無料セミナー

 同時に全国20カ所でi-Con対応の無料セミナーをスタートさせた。基準や法令を解説するとともにソフトの操作についても説明している。会場はいずれも満員状態で、ユーザー以外も多く、発注者側からの参加もある。設計のi-Con対象業務がまだ発注に至っていないことも背景にある。
 設計のやり方として従来と異なるのは、測量から引き渡されるのが3次元の点群データであることだ。同社のソフトを活用する場合、設計者はヴィーナスクレアで3次元測量データを取り込み、そこで縦横断の地形を切り取り、データをV-ROADに渡して道路設計を行う。その成果はLandXML形式で出力し、ヴィーナスクレアに戻した上でデータを合成して納品する流れになる。

プレビュー機能で横断形状の照査も容易

 i-Con設計対象業務では、従来の詳細設計における設計断面に加え、幅員構成や横断勾配の変化点、切盛境界位置などを横断形状として出力することが求められる。ICT施工では連続した3次元形状が必要になり、切盛境界の前後ではダブル断面を作成し、3次元モデルを作成する必要がある。尾畑氏は「そうした作業を自動化し、ICT施工に必要な3次元形状を効率的に作成する機能を持っている」と、i-Conオプションの効果を口にする。
 現在は、ヴィーナスクレアの中で取り込んだLandXML形式のデータを修正できない。「より効率的な作業を可能にするため、12月をめどに修正できるように機能強化する。この部分が整えば、施工者の使い勝手も上がる」(尾畑氏)。新規で両ソフトとi-Conオプションを揃えた場合、価格は80万円程度になる。同社はi-Con施策を背景に、ソフト販売の需要拡大を見込んでいる。
 これまで土木設計では汎用CADを使うことが多かったが、i-Con対応が進むにつれ、専用CADの活用が一気に広がる機運が高まってきた。ベンダー各社の新製品投入は3次元測量や出来形管にも広がり、設計業務に動きが出始める今秋にも活気を帯びてくる。
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