2015/05/30

【現場最前線】生産性向上のカギは快適な作業環境への挑戦 春日市(仮称)総合スポーツC体育館

福岡県春日市は、市民スポーツセンター体育館の老朽化に伴い、さまざまなスポーツ需要に対応できる(仮称)総合スポーツセンター体育館を建設している。現在、躯体工事が完了し、12月末の竣工に向けて最盛期を迎えている。建築本体工事の施工を担当する戸田建設・金子建設・永田建設JVは、200項目に及ぶ生産性向上の取り組みを進めており、江口裕章作業所長は、「作業員がまた来たいと思う現場にする」と、作業所の魅力アップに努めている。

 作業所では、近年の労働者不足などの課題に対応し、作業所の生産性向上を目標に掲げた。そのためには、作業所の魅力を高めることが重要と考え、(1)段取り力(2)作業環境(3)チーム力--の向上に取り組んでいる。
 段取り力の向上では、人手不足が予想されたため、あらかじめ九州各県から職人を集めるとともに、工業化、システム化、ワークシェア化を進めた。具体的には、梁などを工場や現場サイトでプレキャスト(PCa)化して現場の作業を少なくした。さらに、そのPCa部材の取り付けや型枠支保工をとび工、デッキを鍛冶工、鉄筋を土工でできるようにシステム化し、ワークシェアを行った。「人手が足りないと職人さんのプレッシャーになる。できる職種をできる人にやってもらうことで、各人の仕事が平均的になった」(江口所長)と、その効果を話す。

リフレッシュルーム
作業環境の向上は、「新たな休憩所への挑戦」「快適な作業場所への挑戦」をテーマに進めた。休憩所とは別に休み時間にリラックスできるようリフレッシュルームを設けた。横になれるスペースや卓球台があり、ドリンクバーで好きな飲み物を低料金で買える。夏にはかき氷機も設置する。床にはタイルカーペットを敷き、テーブルクロスをかけて清潔感を保っている。

事務所前には花が飾られている
屋外の休憩スペースにもスポーツ施設にちなんだバスケットゴールやキックターゲットを設置している。現場内も快適な作業環境にするため、発注者と話し合って全面レベルコンクリート打設に変更し、フラットな移動を実現した。
 チーム力の向上では、発注者、設計者、施工者が三位一体となり、早い段階で工事の打ち合わせを行い円滑に進めた。工種が異なる職人同士が気軽に会話ができる雰囲気づくりも心がけ、現場のルール決めやスポーツ大会などのイベント開催など、職長会が主体となり活動が活発に行われている。また、現場から事務所に帰る時にごみを拾う一掴み運動や勉強会、リサイクル活動などを自主的に行っている。
 ICT(情報通信技術)化も進めており、iPadを活用した図面の確認や資機材のバーコード管理、新規入場者教育の説明資料などに採用している。これらの取り組みは、作業所運営のモデルとして高く評価され、日本建設業連合会の2014年度快適職場表彰優秀賞を受賞し、戸田建設の他の作業所でも同様の取り組みが水平展開されている。

江口裕章作業所長
現在の進捗率は約70%と順調に進んでいる。江口所長は「約2万㎡の大規模建築にもかかわらず、最盛期を迎えた現在でも100人(通常の7割)程度の人員で済んでいる」ことを、生産性向上の成果と捉えている。

【工事概要】
▽発注者=福岡県春日市
▽設計=石本建築事務所
▽施工=戸田建設・金子建設・永田建設JV(建築本体工事)、新生テクノス・第一電建・浜田電業JV(電気設備工事)、菱熱・丸藤産業・吉竹設備工業JV(機械設備工事)
▽構造・規模=RC・S造地下1階地上3階建て延べ2万0660㎡
▽建設地=福岡県春日市大谷6-28ほか
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