被災地に根差す海外経験豊富な建築家と、日本在住の外国人建築家がタッグを組む地域型復興住宅生産者グループ「グローバル・アーキテクツ・エイド(GAA)」が、その活動を本格化させている。「ノーボーダーな助け合いの精神」をコンセプトに、国籍を越えたデザインセンスある復興住宅づくりに取り組むGAAについて、代表の米村ふみ子氏(ヨネムラアーキテクツスタジオ)=写真左=と、吉野太一氏(吉野太一建築設計事務所)に話を聞いた。
イタリア政府の給費留学生として国立ミラノ工科大を卒業し、同国公認建築家の資格を持つ米村氏。ミラノ市内にあるセルジオ・モスケーニ建築デザイン事務所に務めた後、東京に事務所を構えた。
生まれ育った仙台市に戻ったのは、震災の半年ほど前。震度6強の地震で市内の事務所は、全壊判定を受けたため、隣接する富谷町に移転して再起。自ら被災しながらも、幅広い交友関係の中で、復興に貢献したいという日本在住の外国人建築家たちと協力し、「建築家という職能を生かして、ふるさとの復興に携わりたい」と立ち上がった。
吉野氏は、勤務していた丹下都市建築設計で海外のプロジェクトなどを担当していたが「震災以降、常に地元の復興が気になっていた」と、意を決めて退所し、独立するために、故郷の仙台に戻った。
GAAの協力建築家には、長期にわたり日本で設計活動の実績があり、「メゾン・エルメス銀座」(東京都)や「ワ・ラッセ」(青森市)などに携わったオランダ人建築家のフランク・ラ・リヴィエレ氏(フランク・ラ・リヴィエレアーキテクツ)、名古屋で活動するイタリア人建築家のジュゼッペ・コロニティ氏(コロニティ・デザイン・ルーム)らが名を連ねる。
「さまざまな自然災害が世界各地で起きている中、国境を越えてグローバルに取り組むべき問題であり、ライフワークにしていきたい」と米村氏はGAAの活動に注力する考えを示す。
GAAは、ベースとなる3タイプの復興住宅を提案している。中庭と吹き抜けを持つ『二世帯家族が永く住み続ける家』は、プライバシーを保ちつつ、それぞれの気配が感じられる空間づくりを目指した。屋根が特徴的な『家族がゆったり暮らしを楽しむ家』は、南面にリビングダイニングキッチンを配し、明るく風通しの良い、心地よい住宅を提示。『少人数家族がゆったりと素敵に暮らす家』は、洋画に出てくるような緑の芝生と大きな屋根という特徴を持つ。
米村氏は「今の若い世代は、インテリアを含めたデザイン的な心地よさを追求する価値観がある。グローバルな建築の知恵を出し合いながら、感動できる住宅をつくりたい」と力を込める。吉野氏も「住宅とは本来、もっと身近に生活の延長にあるべきものだ。楽しみながら住宅をつくりあげていく場を提案していきたい」と強調。施主との対話の中で、豊富な海外での生活経験を伝えつつ、それぞれの住まい手のライフスタイルに合ったベストな空間や新たな価値観を提案していく構えだ。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿