3Dプリンタで作成した模型を手に 微量PCBトランスについて説明する吉野専務 |
トランスは、絶縁油を満たした外装タンクに、鉄心と絶縁紙が巻かれたコイルなどが浸されている。絶縁油は、低粘度、高引火点、化学的安定性などの特性が求められるので、かつてはPCBが使われていた。
絶縁油は、非常に高価でリサイクルできる材料であるため、PCBの有害性が問題になる以前のものが、現在でも混在していることがある。一方で寿命を終えたトランスは、所有者責任で処理をする必要があり、ここ3年ほどでPCB処理施設が本格稼働を始めたことを受け、対策を講じる所有者が増えている。
吉野専務は、「一般的な解体業は、トランスの構造が分からないところも多く、廃棄物の運搬業者や処理業者は解体ができない。当社は創業時からトランスにかかわっており、内部に精通し、技能者もいる。また当社の本業は、トランス設置が多いプラント解体であることも特徴だ」と、同社の独自性を説明する。
トランスの処分は、所有者と、運搬、処理業者との契約となるが、同社はこれらの独自技術で、安全に運搬できるように分割するのが仕事となる。
分割・解体といった細分化処理では、「火を使わない」ことも重要だ。吉野専務は、「PCBが含まれる絶縁油は温度が上がれば揮発し、あぶればダイオキシンも発生する。当社はこれまでも、製鉄所など燃えやすいものが周りにたくさんあるプラント解体を手がけている。火や火花を使わず無火気で解体する工法を研究してきた」と語る。
さらに「解体業は、粉塵対策などで封じ込め技術は得意なので、油は真空で抜き取り、空気環境も密閉しながら施工できるのも強み」だ。
同社はこれまでに、数百件のトランス細分化実績があるが、まだこの分野のライバル会社は現れていない。
「PCBなどのダイオキシン類で第三者に影響がないようにすることは当然だが、同時に作業にかかわる技能者にも安全を確保することが重要だ。万全の対策で分割・解体できる体制を整えている」という。
今後の方向性については、「世の中では既にPCB自体が使われなくなっているので、永続性がある事業ではない。当社にとって大きな柱ではないが、危険なくエンドユーザーのリスクを低減する事業としてとらえている。今後はPCB処理プラント自体の解体需要も出てくる。人ができないところに入り込んで行くという当社の姿勢を貫いていきたい」と考えている。
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