2015/09/18

【記者座談会】「できることから動いた!」 関東・東北豪雨災害復旧で活躍する地域建設業

A 台風17、18号による記録的な豪雨が関東、東北を襲い、10日には一級河川の鬼怒川が決壊し、甚大な被害が出た。

B 12日に茨城県常総市の決壊現場に行った。堤防が「切れる」とはよく言ったもので、本当にその部分だけ堤防がごっそりなくなって河川敷と同じ高さの地面があらわになっていた。そこから水が流れ込んだ東側を見ると、一面、水と泥で東日本大震災の現場を見た時のような感覚だった。堤防周辺では、緊急復旧工事に着手していた鹿島と大成建設、その協力会社があわただしく働いていて、改めて大手建設会社の人・機械の動員力に感嘆した。
A 地元建設会社の動きは。
 
B 大手2社が施工している所も、地元業者名の入った通行止めの看板が立っており、まず始めに地元の会社が地域住民を守るために活動したことがうかがい知れた。個人宅の土砂撤去なども手掛けるなど、誰かの指示を受けて活動しているというのではなく、とにかく「できるところから手を付け始めた」という感じだった。
 
C 自治体からの指示に基づき、広範囲にわたる被害状況の把握や危険個所の応急対応に全力を挙げている。茨城県だけでなく、日光市や鹿沼市などで多くの土砂災害が発生した栃木県でも、県建設業協会が9日以降、各支部会員が県土木事務所からの指示に基づきパトロールを実施。県下全域で被害が出ている地点やその状況が写真で分かる道路・河川等情報共有システムを活用し、情報収集に当たった。16日現在、全県下の会員から320件を超える情報が寄せられている。こうした情報などを含め、14日に協会幹部が栃木県からの応急対策業務要請に対する対応をまとめ報告書を提出している。今回の地場業界の活動について栃木県のある職員は「大きな力になる」と語っていた。
A 関東地方の直轄河川堤防の決壊は1986年の小貝川以来。国土交通省関東地方整備局の対応は。
 
D 堤防決壊後、現地の状況を少しでも確認しようと、関東整備局の災害対策本部に電話しても、なかなか通じない。やっと連絡がとれても、対応に追われている職員の声が後ろから響いてきて、未曾有の事態と向き合っている緊迫感に包まれていた。人命最優先の中でリエゾンやTEC-FORCE(テックフォース=緊急災害対策派遣隊)の出動、資機材の投入、当面の重要課題となる決壊個所の応急復旧など、10日を境に状況は一変した。
A 決壊の原因究明も進められている。
 
D 首都圏の地方部を流れる河川では無堤防部への対応、弱い個所を強化する必要性はこれまでも指摘されていた。7月に就任した光成政和河川部長が首都圏氾濫区域堤防強化対策など緩傾斜堤(7割堤)の事業に着目し、「安全度を格段に上げることを考えている」と語っていただけに、堤防強化の重要性をまざまざと実感させられた。
A 被害の最も大きかった常総市では決壊から1週間たった17日時点でも1700人余りの住民が避難生活を余儀なくされている。
 
B 鬼怒川と小貝川に挟まれた地域のほとんどが浸水した。2つの川を東西に抜けることができる基幹道路は数本あるが、ほとんど同じ高さのため決壊部分から流入した水をせき止められず、すべてが浸水して通行止めとなった。どこか1つでも東西を貫く道路で高い道路があれば、水がせき止められて浸水域を狭められていたのにと思う。リダンダンシー(代替性)の面からも高さが異なる道路を整備するという視点は必要だと感じた。それと通行止めの道路が多い上に、さまざまな人と車両が交差するため、とにかく渋滞がすごい。あれでは復旧作業にも支障を来すのではと心配になる。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿