2015/09/06

【働きかた】生活守る昇降機メンテ、震災時の無力から学んで実践 フジテック・鈴木悠里さん

入社6年目で、東京都港区や品川区、目黒区を中心に昇降機のメンテナンス作業に当たっている。入社以来同エリアで勤務し「これまでは覚えることで必死というところもあったが、覚えたことを実践できるようになってきた。どのくらい自分ができるようになったか確認できるのが楽しい」と充実した表情をみせる。

 業務に励む上で支えになっているのは、入社2年ほどで遭遇した東日本大震災での経験だ。初めて緊急の復旧作業に当たり、発生直後から翌日の夜にかけて事務所に泊まり込みながら徒歩で現場に向かった。誰もが経験したことがない事態に直面する中で「大地震になるとエレベーターのロープが絡まることがあるが、それを確認するところまで頭が回らず先輩の応援を仰いだ。自分の無力さも感じた」という。教訓になったと感じており、「人に頼らず自分で作業するために努力するようになった」と、その後の仕事での糧にもなっている。
 そうした意識は「今の段階では自分でできる作業がまだ少ない。できる作業を増やし、責任者としての自覚を養いたい」と、さらに仕事の幅を広げようとする原動力にしている。「部品の交換やメンテナンス方法には、マニュアルはあるもののまだ経験していない作業がある。先輩について直接教えてもらうなど自発的に取り組みたい。また、電気に関する知識も勉強し、機器の調整でエレベーターの振動を直せるようにしたい」と具体的なビジョンを持って取り組んでいく。
 学んだことを実践して仕事をより良くしていくことは、メンテナンス作業の醍醐味とも感じている。責任者の資格を取得して初めて携わったエスカレーターのチェーン交換作業は「作業員に指示を出してスムーズに交換するため、先輩に聞いたり資料を見て学んだりして事前準備した。作業後に正常に運転し始めたとき、学んだことが身についたと実感できた」と、大きなステップになった。
 こうした経験は、後輩への指導にも生かす。「口添えしてくれる先輩がいないと、後輩も不安になる。分からないことがあっても後輩に教えられるようにしたい」と意識も高まっている。社内は、女性の身長では作業が難しかった装置を改良してくれたり、同僚との女子会で情報交換ができるなど、働きやすい環境と感謝する。「昇降機は、なければ生活できないほど重要なもの。その役割を支える責任感を感じられる仕事であり、大きな装置を扱える楽しさもある」と仕事への誇りとともに、女性のさらなる進出を歓迎する。
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