2015/09/05

【大成建設】「T-ZEBシミュレーター」で的確にZEB化診断! 省エネ化提案にも対応

大成建設は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を目指して開発した計画・評価ツール「T-ZEBシミュレーター」を使った本格的な提案活動を9月から始める。シミュレーターは、実証データを反映させることでZEBの計画・評価、年間エネルギー収支の検討を、より正確に短時間で行うことができる独自技術として確立。2015年内には、コスト検討機能を付加してZEB化診断能力をさらに向上させ、最適な提案に生かしていく。写真は同社のZEB実証棟。

 シミュレーターは、立地や周辺建物の影響を考慮した太陽光、風力、地中熱などの創エネルギー量と、計画建物に各種の省エネルギー手法を導入した場合の消費エネルギー量とのエネルギー収支をさまざまなパターンから検討できる。すでに民間案件での適用も決まっており、PR用のパンフレットの活用と併せた提案活動を本格化する。
 創エネルギー量の評価に当たっては、対象敷地で建物の規模に応じた仮想モデルを作成し、利用が可能な年間の日射量や通風量、地中熱量を計算する。太陽光については壁面利用も細かくシミュレーションできる。

創エネルギーの入力条件例
省エネルギー量は建築、設備それぞれの計画に分けて評価する。現在の評価項目は約100件だが、今後も順次増やしていく予定だ。建築計画には主に屋根や外壁の断熱性能や、窓による採光・通風、庇寸法を始めとする日射遮へいの評価項目がある。設備計画は、照明、空調、換気、電気、給湯、昇降機の評価項目があり、さまざまな省エネ設備や器具などを導入した場合の効果を算出する。

省エネルギーの入力条件例
創エネと省エネ双方のポテンシャルを評価して一般的な建物と比較することで、計画建物のZEB化検討や、ZEBを目指した建物への最適な提案を容易に行うことができる。同社設計本部は「完全なZEB化だけでなく、エネルギー使用量を削減するためのツールとしても活用できる」とシミュレーターの活用による建物の省エネ化に期待を寄せる。
 シミュレーターは全国の立地条件に対応し、同社が横浜市の技術センターに建設したZEB実証棟で集積した実証データを解析に反映させることで、ZEB化のための計画・評価や年間エネルギー収支を従来に比べて、より正確に短時間で検証できる。評価にかかる日数は現在、7-10日程度だが、「将来的には、より早く判定できるように改良を加えていく」(設計本部)としている。
 15年内には導入する省エネ手法などのコストを自動で検討する「コストスタディー機能」を追加し、さらに評価性能を高めた上で、提案活動を推進する。ノートパソコンなどを使い、顧客にその場で提案することができる簡易版の開発も視野に入れている。
 同社はZEB実証棟を1年間運用し、都市部に建つ単体の建物として国内で初めて年間の創エネルギー量がエネルギー消費量を上回る「年間エネルギー収支ゼロ」を達成している。政府が14年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、20年までに新築の公共建築物など、30年までには新築建築物の平均でZEBを実現する目標が盛り込まれている。今後は国の動きに合わせて、シミュレーターによる提案活動と創エネ・省エネ技術の高度化、コスト低減を同時展開することで、20年までに「市場性のあるZEB」の実現を目指す。
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