2015/09/25

【記者座談会】専門家と市民との連携が課題に 土木学会、建築学会の全国大会


A 16日から18日まで土木学会の2015年度全国大会が岡山市で開かれたが、特徴は。
B 今回は、「新たなる第一歩」がテーマの副題になっていたように、講演などでは、土木学会101年目として次の100年への第一歩を意識した発言が多かった。主テーマである「地域とともに確かな未来を築く土木技術」というのは、廣瀬典昭会長が基調講演で示した「市民とともに行動する土木技術者」という姿を象徴するテーマだった。

C 磯部雅彦前会長が昨年の全国大会の総括会見で土木技術者が専門分野に特化しすぎる“たこつぼ化”を懸念していたことを思い出した。昨年まとめた「100年ビジョン」でも『境界をひらく』がキーワードだった。廣瀬会長も「土木技術者が専門分野に特化しすぎていて、土木全体を見ることが少なくなり、世の中のためにどういう仕事をしているかを考える機会が少なくなっている気がする」と発言しており、こうした専門分野にこもりがちな傾向を打破しようという意識が感じられた。やはり「100年ビジョン」を意識したつながりの感じられる大会だった。
B 昨年は広島土砂災害から約1カ月後の開催で、現地調査団の報告なども開かれたが、ことしは関東・東北豪雨から1週間も経っていなかった中での開催だったため、調査団の報告などはほとんどできなかった。治水政策の発展のためにも今後の調査団報告には期待したい。
B 2日目に開かれた交流会には、国土交通省で建設流通政策審議官を努めた大森雅夫岡山市長も顔を見せ、田代民治次期土木学会長らと談笑していた。大きな声で元気にあいさつする伊原木隆太岡山県知事に負けず劣らず、元気なあいさつで会場を沸かせていた。市長になっても気さくに声を掛け、相変わらず建設業への関心も高い様子だった。
A 一方の日本建築学会の全国大会はどうだったかな?
 
建築学会全国大会の会場内には地元の屋台が並び、多くの市民が訪れた
D 昨年に比べて発表件数は少し減っていたけど、例年以上の盛り上がりを見せた。メーンテーマが「いま、地域と生きる建築」だったこともあって、東海大学湘南キャンパスの会場内には地元の屋台が並んでお祭りみたいだった。学会の大会で子どもたちが射的で景品を狙う姿を見るとは思わなかった。
E 4日から6日までの会期中に、一般市民を対象に分かりやすくまちづくりを紹介するシンポジウムも開かれて、専門家はもちろん大人から子どもまで楽しめる大会となっていたのが印象的だった。
A 発表内容の傾向は。
E 以前に比べると東日本大震災についての発表は減っていたようだ。単なる復興事例の紹介ではなく、客観的なデータを集めて深く考察する発表や阪神・淡路大震災など過去の災害と比較する発表が増えたように感じた。被災地ではインフラ復旧が峠を越え、いよいよ建築工事が始まろうとしている。日本建築学会の蓄積した知見を新しいまちづくりにぜひ生かしてもらいたいところだ。
D 新国立競技場の見直しもあり、公共施設にどう市民の理解を得るかという問題についてはいろいろなところで議論が交わされていた。単に市民参加を促したり意見聴取をするだけではない、専門家と市民が連携する難しさが浮き彫りになっていたように思う。
E 建築ストックの管理についても関心は大きかった。特に近代の名建築が次々と解体されることを懸念する声は各方面から上がっていた。ただ、今ある建築やこれからつくる建築をどうやって次世代に伝える価値のある建築としていくか。そこをもっと考える必要があるという指摘もあった。
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