国土交通省のi-Construction(アイ・コンストラクション)を起爆剤として、建設業界に急速な勢いで導入が進んでいるICT(情報通信技術)機器。特にUAV(無人航空機)は調査・計画段階から施工管理、維持管理段階まで活用の幅が広く、既に導入している企業も多い。では、その最新の取り組みはどのようなものなのか。EE東北実行委員会が6月に開いた第2回UAV競技会の総合技術部門で優勝とベスト計測賞、プレゼンテーション賞を独占したパシフィックコンサルタンツ・計測リサーチコンサルタントを率いた畠山直樹氏(パシフィックコンサルタンツ東北支社国土保全事業部河川室(河川・砂防)チーフプロジェクトマネージャー(CPM))に話を聞いた=写真。
--UAVにかかわるきっかけは
「2014年度に東北地方整備局東北技術事務所から『UAVによる河川調査・管理への活用手引き(案)』をまとめる業務を受託したことがUAVに本格的にかかわるきっかけとなった。この中で計測の精度管理や安全対策などを検討した」
「会社としてはこの前にも空撮などにUAVを活用していたほか、東北支社では14年3月に初めて福島市内の水門点検でUAVを使い、3次元データを取得・解析した」
--会社でのUAV活用体制について
「首都圏本社にインフラマネジメント部門があり、新技術の有効活用の1つとしてUAVの利用方法も検討されている。各支社にも同様の組織がある」
「東北支社では河川や道路・橋梁などを担当している20-30人の技術者がUAVを使ってさまざまな業務を遂行している。本社や各支社とも連携し、『維持管理』『インフラマネジメント』などをキーワードとしたバーチャル的な組織を形成している」
--東北支社独自の取り組みは
UAVを使ったダム点検 |
「ダム点検調査などで、水中と水上の両方の3次元データを取得して合成する方法に取り組んでいる。具体的には、水中部は水中スキャナーなどを使って計測したデータを可視化し、UAVによる水上からの計測データを重ね合わせる方法だ」
「水中・水上を一体で3次元計測できるため、それぞれの変状の範囲や広がりを把握できる。この方法は、河川堤防や河川内に構築された橋脚の点検、維持管理、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)などにも活用可能だ」
--UAVを活用する際に大事なことは
「最も重要なことは、安全の確保だ。法規制が厳しくなったため、以前のようにどこでも飛ばせるわけではないが、事前に飛行ルートやアンテナの状況、気象条件などを確認し、しっかりとした安全計画を立てる必要がある。UAVを飛ばす時間は10分、20分でも計画立案には何日も掛ける。これが最終的には品質の確保にもつながる。よく“仕事は段取り8分”と言われるが、UAVの場合は“段取り9分”と考えるべきだ」
--今後の展望について
UAV競技大会で優勝したパシコンチーム |
「UAVの開発は日進月歩で進められており、昨年ぐらいからレーザー計測器を積んだものもでてきた。ほかにも防水機能を持ったものや着水可能なフロート付きのものもあり、ますます活用の幅が広がるはずだ」
「特にインフラのマネジメント分野への導入がさらに進むと思う。当社はその時に追いかけるのではなく、リードする立場でいたい。そのためにも、まずは国交省のi-Con施策を注視し、地域貢献を通じた展開を実践するためにもしっかりと実績を積んでいきたい」
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿