日本とベルギーが外交関係を樹立してから150周年を迎えることし、ベルギーのブリュッセルで8月に開かれた花のイベント「ブリュッセルフラワー・カーペット」のデザインを乃村工藝社のデザイナー鈴木不二絵さんが担当した。普段はグラフィックデザインやロゴ制作などの業務に取り組む鈴木さんは、約1800㎡という今回の巨大な作品づくりは改めてデザインの力を実感する出来事だったと振り返る。
2年に一度開かれる「ブリュッセルフラワー・カーペット」は市の中心部グラン・プラス広場で、ベルギー名産のベゴニアの花を使った絵画を描く国民的なイベントで、国内外から多くの観光客が訪れる。今回は「花鳥風月」と題し、日本らしさを約60万本のベゴニアの花で表現した。
ツルやコイ、松や竹といった具体的な要素が目を引く作品だが、デザインに際しては見た目だけでなくそこに込められた意味に注目した。「家紋や着物の柄などをリサーチし、その傾向をつかんでデザインした。円満長寿のめでたいイメージを重視し、縁起の良さや成長といった願いを込めた」と語る。
1800㎡のフラワーカーペット(撮影:cWim Vanmaele) |
一方、伝統的なカーペット文化を持たない日本人にとっての「カーペットらしさ」をデザインのパターンに落とし込む難しさも実感したという。また「8色から10色」という限られた花の色で表現する必要があり、「限られた色の中でどう日本らしさを表現するのか、海外のデザイナーとの検討を積み重ねた」と振り返る。
ただ、当初は「海外のデザイナーとの仕事は初めてでコミュニケーションに不安もあった」というが、結果的には満足する作品を実現できただけでなく、海外に視野を広げるきっかけになったと強調する。「自分の作品が展示され、多くの人を笑顔にできたことを大変うれしく光栄に思っている」とも。
会期中に現地を訪れた鈴木さんは、「テロの後にフラワー・カーペットによって元気をもらえたことの意味は大きい」という来場者の声を耳にした。展示会場となったグラン・プラス広場は3月に市内で連続爆破テロが発生した直後に犠牲者の追悼集会が開かれた場所でもあり、テロの記憶は色濃く残る。そうした感想を通じて、「1つの作品を見た多くの方を笑顔にするという貴重な体験ができた。人が見て幸せな気持ちになるようなものをデザインしたい」と痛感したという。「グラフィックデザインは空間に対して強い影響力を持っている。その力を生かして、これからも空間や人の心に影響を与えていきたい」と力強く語った。
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