2016/09/19

【スリーエムジャパン】医療用技術を土木へ! 毛細管現象を利用したコンクリート床版給水養生用シート


 高度経済成長期に整備された多くの橋梁やトンネルが老朽化に直面し、維持更新が迫られている。こうした社会的ニーズを背景にスリーエムジャパンが開発した床版面用の給水養生シートは技術開発、生産技術、製造、品質管理、マーケティングのあらゆる部門が知恵を出し合って誕生した。微細な溝を施して毛細管現象を利用し、敷設するだけで水を均一に搬送でき、給水作業の省力化、作業負担の軽減、養生コスト抑制という効果が発揮できる。開発に携わったテープ・接着剤製品事業部の石塚辰徳氏は医療分野向けの技術を転用し「抜群によいものを作ろう」と奮闘した。写真は施工状況

 石塚氏は入社以来、片面粘着テープのマーケティングに携わってきた。ある顧客の要望が契機となり「土木分野のコンクリート床版向けに何か作れないか」と養生シートの開発がスタートした。「お客さまの役に立てるものであれば、テープでなくとも形態は何でもよいと思った」と当時を振り返る。
 「水中に入れたように湿潤状態が均一になり、誰でも簡単によい質を出せるものを作ろう」と考えた時、思い浮かんだのは医療分野向けに提案活動を行っていた液体搬送技術だった。世界中の社員が協力し、1つのアイデアを次のアイデアに発展させ、常に新しいモノを作り続けるグローバル・イノベーション・カンパニーを目指す同社だからこそ「医療用分野の技術を何とか土木分野に転用できないか」と考えたのも当然だった。今から3年前のことだ。


 ただ、土木の現場に当てはめるには一筋縄ではいかなかった。室内を主とする医療分野とは気温などの環境が全く違う。加えて土木分野ではスケールの大きい製品が求められ、シートの上を歩くことができる耐久性も求められる。当然、施工コストも重要となる。大手ゼネコンなど約30社延べ100人超にヒアリングを行い、現場に耐え得る製品を形にしていった。特に「大きなサイズに転用することに苦労した」と石塚氏は振り返る。製品は1m幅だが、300mm幅のサンプルを作り、何往復もして敷設と撤去を検証した。半透明にすることで、湿潤状態をシート上から目視で確認でき、給水のタイミングを逃さないように工夫するなど仕上がり品質の向上にもこだわった。
 2015年の発売開始以来、全国30件以上で採用、検討され、使用した現場からは「施工が楽になった」との声が多く、「薄型で取り扱いが容易な点が作業効率の向上に大きく寄与した。短工期が求められるにもかかわらず、除去後のコンクリートが緻密化され、高品質で美観にすぐれたコンクリートに仕上がった」などと好評を得ている。石塚氏は「数え切れないほど市場に送り込みたい」と、将来的には住宅・建築分野への展開も見据える。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 首都高の大橋JCT屋上に水田が出現 東京都目黒区の新たなランドマークとなっている首都高速大橋ジャンクション屋上に、田んぼが出現した。これは、首都高速道路会社が大橋換気所屋上部分を活用して整備したもので、約1100㎡のエリアに樹林地や草地、せせらぎなどを設け、多様な生物の生息空間を創りだした。28日には、地元目黒区の菅刈小学校の児童約40人らが、地上約35mにある水田で田植えを体験し、都心の空中に出現した自然と触れ合った=写真。  この水田は「おおはし里の杜」と名付けられ、目黒川… Read More
  • 「大キリン」を提供した中国・三一重工ってどんな会社?-2- 三一重工は、油圧ショベルやクレーン、杭打ち機、生コン車など多様な建設機械を生産している。得意とする生コンポンプ圧送車は、中国国内シェアが57%。中国で建てられる高層ビルの80%が同社の機械で、建設中の上海中心大厦(完成高さ632m)にも同社のポンプ車が18台稼働している。  また油圧ショベルの国内シェアは13%で2位。09年の6位から一気にジャンプアップした。トップはコマツ。  同社では「1位のコマツとの差は2000台くらい。ことしはコマツを超… Read More
  • 「大キリン」を提供した中国・三一重工ってどんな会社?-3-終 同社の生コンポンプ車  今回は、三一重工が中国から国外へと出て行く意志があるかを探ってみる。中国には、政治的に民間企業が海外へ出ることを許さない時代があったそうだ。しかし現在では国際市場を見通している。  その際にもっとも重視するのは南半球だという。南米、アフリカ、中東はインフラ整備が遅れており、インドもインフラは中国より15年ほど遅れている。これらをバネに、これまで売上の10%程度だった海外比率を5年後に3割まで増加させたい考えだ。  同社… Read More
  • 熊谷組が有料道路事業に参入/白糸ハイランドウェイの全株式を取得 白糸ハイランドウェイの料金所  熊谷組とガイアートT・Kが、有料道路事業への参入を決めた。熊谷組とガイアートT・Kは、今回の参入によって道路の維持管理ノウハウなどを蓄積し、今後増加が見込まれるPPP事業や道路保全の新技術開発などに役立てたい考えだ。6月30日付でジェイ・エル・ディー(東京都中央区)が保有する「白糸ハイランドウェイ」(長野県軽井沢町)の全株式をガイアートT・Kが取得、今後1、2年の間に4、5000万円を投入し、道路の修繕事業など… Read More
  • 都心に東京ドーム面積相当の“発電所”が出現 森ビルが、東京都港区の六本木ヒルズ地下で稼働中のコジェネシステムを公開した=写真。発電施設の全面積は約1万㎡で、東京ドームのグラウンド部分に相当する大きさだ。節電の夏を迎え、六本木ヒルズで活用している都市型発電所の重要性をアピールした。  六本木ヒルズでは、一般のオフィスビルで使われるような非常用電源設備ではなく、独自のエネルギープラントを設けて地区内の電力約3万8000㌔ワットを発電している。またガスタービン発電時に出る排熱を熱供給施設に送り… Read More

0 コメント :

コメントを投稿