建設コンサルタンツ協会九州支部の「夢アイデア募集」に寄せられた「ヤギ・羊ECOプロジェクト」が実現している。発案から6年で羊は30頭を超え、レンタル事業など次の展開も見えてきた。
プロジェクトは、羊に雑草を食べさせ除草する。芽から食べる丁寧な除草は雑草の成長を抑制し、収集・処分といった作業も不要となり手間やコストを削減できる。さらに、多年草などの増殖を抑え管理の容易な牧草地に植生を変えることができる。堅い草を食べないという“偏食”はヤギと一緒に放つ混合放牧で解決する。
地域活性化という狙いもある。身近にいない羊やヤギなどの動物とふれ合う機会を通して、人との交流を創出する。福岡市内の公園で2015年度から実施している除草実験では、子どもを中心に多くの人が訪れ、にぎわっていた。
10年度に夢アイデアの提案が寄せられるとすぐに同支部は、提案者の山田善光長崎県立北松農業高校教諭とともにNPOの「島原半島ヤギ・羊ECOプロジェクト協議会」を立ち上げ、実現に向けて動き出した。協議会のメンバーは事業に適した羊を求めて全国を巡り、安定して繁殖させる研究を続けた。除草効果を確かめる実験も始め、ことし8月に実施した福岡市内での除草実験では、羊7頭、ヤギ2頭で効果を調べ、100㎡であれば1日もかからず除草できることを確認した。
同校に拠点を置き、所有する羊は30頭を超えた。計画では60頭を達成した段階で官公庁からの業務受託を目指す。レンタル事業も計画し、1頭当たり1万円を想定し、得た収益は冬場のえさ代などに使う。事業の安定化には300頭程度が必要だとし、今後も頭数を増やしていく。
日本の建設業では民間事業者が事業を提案し官が取り入れるケースは少ない。その点、夢アイデアは新たな事業を創出する試みの1つといえる。同協議会長で夢アイデア実行委員会委員長の白石悦二氏は「世の中の仕組みを根底から変える。夢アイデアにはその可能性がある」と話す。同支部が夢アイデアの募集を始めたのは02年。これまで657編の「夢アイデア」が提案されており、ヤギ・羊ECOプロジェクトのほか、「紫北川プロジェクト」「思い出NAVIプロジェクト」などが実現化している。
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