2016/09/30

【記者座談会】日本の建築を未来へ 世界遺産登録目指す代々木競技場・建築文化週間・各全国大会

A 「代々木屋内競技場を世界遺産にする会」が発足した。建築家の槇文彦氏の肝いりだと聞いたけど。

B 丹下健三の下で国立代々木競技場の設計チーフを務めた神谷宏治氏が一昨年に亡くなってからずっと世界遺産登録のことを考えていたらしい。ギリシャのパルテノン神殿が絶対に壊されないのと同じように、代々木競技場も将来にわたって保存し続ける必要があると話していた。
A なぜ単体で目指すのかな。丹下建築群で一緒に申請することはないの。
B 2020年東京五輪までに登録するのが1つの目標だ。スケジュールに余裕はない。丹下作品の「最高傑作」に絞って申請した方が効率的だと判断したんだろう。
C 代々木競技場では鉄とガラスとコンクリートという近代的素材を使って、それまでの近代建築にない力強さと動きを生み出した。すべての丹下建築を保存し続けるのは現実的ではないかもしれないけど、そこから何を残すべきかを考えるとやはり代々木がずば抜けている。
B まずは重要文化財への登録が不可欠だ。どれだけ多くの一般市民が建築の文化的価値への関心を持つかが問われるだろう。重要なのは会の立ち上げよりも、「多くの人が実際の建築に足を運び、その魅力を感じる」社会をつくることだと槇氏も話していた。
C シドニー・オペラハウスや国立西洋美術館などこれまで世界遺産になった建築の設計者は欧州出身者ばかりだ。もし代々木競技場が世界遺産に選ばれれば丹下健三がアジアで初めての世界遺産の設計者になる。世界遺産登録は訪日観光客の増加にも一役買うだろうし、目指す価値は十分あるのではないかな。
A 建築文化と言えば、日本建築学会の「建築文化週間」が10月1日から始まるね。
D ことしは学会創立130周年記念ということもあって例年以上に盛りだくさんの企画となっている。なかでも注目されるのが特別企画の「パラレル・プロジェクションズ」だ。1980年代生まれの140組もの建築関係者が一堂に会し、それぞれの活動の中に30年後の建築の未来を見いだすためのプラットフォームとして、フォーラムとともにウェブサイトなどの多様なメディアも駆使しながら多角的に表現していく。1日にスタートし、4日間で計14のセッションが行われる。
A 10月は設計3団体の全国大会もあるね。
B まず7日に東京都内で日本建築士事務所協会連合会の全国大会がある。業務環境の変化への対応が大きなテーマだ。記念講演会では日建設計の山梨知彦氏が建築設計のIT活用方法を紹介する。例年になく「業務」に寄り添った記念講演会となる。
C 大分県で22日に開かれる日本建築士会連合会の全国大会で中心になるテーマは地域創生と建築・まちづくりだ。人口急減・超高齢化に直面した地域社会に建築がどう応えるのか。歴史的な町並みと建造物の保全・再生についての全国ヘリテージマネージャー大会や地域木材を使用した木造建築フォーラムが予定されている。
D 日本建築家協会(JIA)の大会は初めての大阪開催となる。商都であり笑都として濃密なコミュニケーションの中に成立してきた大阪の建築と街、伝統と文化、社会と市民について、「繋(つな)いできたもの、繋いでゆくもの」を再考することで、均質化から脱した地域性豊かで人が生き生きと暮らせる環境を考えようというのが主題となる。27日から29日の3日間、シンポジウムやセミナー、各種会議、それに建築ツアーや展示会がみっちりと組み込まれた大会プログラムからも主催者側の意欲が感じられるよ。
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