2016/09/09

【現場最前線】福島-山形-秋田の大動脈で床版・桁を総取替え 篭岩橋外上部工補修工事


 福島市を起点に、山形県を経由して秋田県に至る東北地方の大動脈・国道13号。その起点部に程近い福島市飯坂町で、東北地方整備局福島河川国道事務所発注の篭岩橋外上部工補修工事が、小野工業所(本社・福島市、小野晃良社長)の施工で行われている。架設から半世紀を迎え、今回で3度目を数えるという補修工事はどのように進められているのか。2期工事となる上り線の工事が始まったばかりの現場を訪ねた。

 篭岩橋は、1966年に福島市飯坂町中野字沖根山地内に建設された長さ37.5m、幅8.47mの鋼単純非合成H桁橋。これまでに2度の補修工事が行われたが、橋梁点検で「速やかに補修が必要」なC2判定となり、対応策を検討した結果、上部工形式を鋼3径間連続I桁橋に変更して架け替え、一般交通の安全確保と長寿命化を図ることとした。
 通常、上部工補修では床版だけを取り替える場合が多いが、経年による桁の腐食も著しかったことから、今回の工事では床版と主桁の双方を交換するという、稀有なケースとなった。また既存橋は桁が水平だが、補修に際しては桁断面を大きくして強度を高めるため、緩やかに湾曲する特殊な形状にして強度を補っている。
 床版・桁の総取り替えという、難度の高い工事をさらに難しくしているのが、施工場所が主要幹線道路であることだ。車両の通行量が多い中、全幅8.5mの道路を片側交互規制して通行を確保しながら施工するため、非常に狭あいな環境での作業を強いられる。安全上、設置が不可欠なバリケードもスペースの狭さに拍車をかける。
 現地での道路規制は、交通誘導員を24時間張り付けて終日行っているが、大動脈で車両が多く、中には通行不可能な大型特殊車両も規制に気付かずたびたび進入してくるだけに、その周知には最大限配慮。現地から30㎞以上離れた米沢八幡原中核工業団地の入り口に看板を設置しているほか、東北整備局の協力を得て電光掲示板でもアピール。福島県警も交通規制の周知に協力しているという。
 実際の作業では、既設の床版を4.5t、1.78×4・65mサイズのブロック状に切断し、吊り上げるための穴を抜き、ジャッキで持ち上げて桁とはく離させる。その後25tのラフタークレーンで吊って撤去し、運搬用のトラックに積載する。次いで、既設の桁を約10mの長さに切断。床版を撤去しているため、桁の吊り上げには作業半径の大きい55tのクローラクレーンを使用している。
 桁の撤去後、支承設置などを行い、新たな桁を架設するとともに、吊り足場を組み立て、プレキャスト床版の現場打ちなどを行って完成させる。1期分の下り線はこの8月に終了しており、現在は2期の上り線で工事が行われている。
 施工に当たって小野工業所は、桁の製作をテッコー(東京都大田区)、高耐久性の重防食塗装には千葉紡錆(千葉県市原市)と、資本提携している企業を活用。内製化によって売上向上とともに工事コストの低減を図るなど、グループの総力を結集して、さまざまな制約がある難易度の高い工事に取り組んでいる。
 現地は積雪地帯で、冬季間に危険度が高まる片側交互通行を回避するため、12月初旬までに補修を完了させ、早期の完成を願う道路利用者や地域住民の期待に応える構えだ。
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