2016/09/18

【東邦レオ】グリーンインフラで都市を冷やせ! 植物がなじむ基盤材『J・ミックス』


 自然の循環を都市のシステムに組み込む「グリーンインフラ」に注目が集まっている。豪雨による冠水に悩まされてきた米国オレゴン州のポートランドでは緑地帯を道路よりも一段低くして雨水を流し込んで吸収させ、植物を育てるシステムなどを作り上げ、グリーンインフラ先進都市として、世界中から視察団が訪れる。東邦レオ(本社・大阪市、橘俊夫社長)は、海外の先行事例を参考に、日本国内でもグリーンインフラの発想を取り入れた製品の普及に力を入れている。写真は植栽の周辺に『J・ミックス』を施工する様子

 ビルの屋上緑化を手掛ける同社が、日本の都市に適したグリーンインフラ用の基板材『J・ミックス』の販売を開始したのはことし6月。雨を吸収して基盤材内部に保持し、雨がやんだ後には路面から蒸散するとともに、地下にも流すといった土壌に近い機能がある。2009年から実験や試験施工を続け、足掛け7年で実用化した。グリーンインフラで使われる部材は自然の仕組みに近く、多くの機能を持つことが求められる。従来使われてきた貯水槽や管路などは“グレーインフラ”と呼ばれ、「貯める」「流す」など機能が単一的で定期的なメンテナンスが必要だが、グリーンインフラは維持更新の手間もあまりかからない。

J・ミックスは再生砕石に腐植物質をコーティング

 J・ミックスは、ビルの解体などで出たコンクリートなどの再生砕石を使い、その表面には腐植物質をコーティングしている。これは有機物が腐敗したものを、放置して分解を進めたもので、最終的には酸性で粘度のある腐らない物質になる。植物はアルカリ性に弱く、コンクリートが混ざった土壌ではあまり根が張れないが、J・ミックスは酸性の腐植がアルカリ性を中和し、植物は砕石の中に根を張って水を吸収できる。
 腐植表面の毛細管現象による「しみ上がり効果」もJ・ミックスの特徴の1つだ。都市の冷却に効果を発揮し、一度浸透した水が、腐植表面を通って路面に向けて上がり、保水性ブロックの舗装なら、打ち水のように街路の温度を下げる。

J・ミックス(左)とコーティングなしのコンクリート基盤材

 空隙率は41%で、保水能力は土木工事で使われる空隙率30%の単粒度砕石に比べ、約1.4倍も上回る。砕石が大きいと空隙が目詰まりを起こしやすいが、開発を進めた木田幸男専務は「粒径がそろった骨材を使う工夫で解決した。電車の線路石やパチンコ玉が上からの圧力に強く、沈まないことから思いついた」と明かす。締め固めない砕石は柔らかいままで、植物の根も入りこみやすい。
 販売に先立ち、同社は大学、公園、再開発の現場など20カ所程度に試験導入し、施工性を確かめた。横浜市みなとみらい地区のグランモール公園では、舗装の下にJ・ミックスの砕石層を設けた。市が「長さ700mにわたる地下水脈の形成」と表現するように、夏場には雨水を吸った街路樹の葉からの蒸散で周辺の気温が下がり、しみ上がる雨水が打ち水のように路面を冷やして気温を下げる。
 雨水貯留浸透槽の代わりにもできる。1m3当たり95%の水を貯められる貯留槽と比較して、J・ミックスは41%の性能と体積は必要だが基礎工事が必要なく、掘削した穴に運び込んで転圧するだけだ。経年劣化もなく、素材は再利用できる。芝生の下地材に使って貯留浸透層にしたり、貯留槽の周辺に埋めて、能力の補填にも使える。
 「いま、緑化業界ではグリーンインフラ元年という機運が高まっている。まちづくりを考える上で、必ず重要になる概念だ」(木田専務)。導入すれば建物の高さ制限が30mから40mに緩和される措置も受けられ、ゲリラ豪雨のピークカットにも役立つ。既存インフラの負担軽減にもつながる点で、同社は2018年度までに5億円の売り上げを見込んでいる。
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