NTT都市開発は、京都市の歴史的な小学校をホテルにリノベーションする事業を計画している。市と60年間の定期借地権契約を結ぶ予定で、昭和初期に建設された既存校舎の外観を保存・再生し、京都の伝統技術や文化を取り込んだホテルに整備する。教室を客室に改修するほか、講堂・体育館はバンケットにリノベーションする計画で、宿泊客に「ここでしか体験できない感動を提供」(同社)したい考え。先月、市と同社は「元清水小学校跡地活用事業」の基本協定を結び、事業の具体化に向けた協議を進めている。2018年度の開業を目指す。写真は改修前の校舎
外観を保存・再生した改修後のイメージ |
◆地域利用施設も提供
既存の教室(改修前) |
京都の伝統工芸を伝承するインテリアを採用した客室に(イメージ) |
歴史的・文化的に価値が高い校舎の保存・活用に向けて市は、公募型プロポーザルで民間事業者の提案を募集。10者が応募し、210点満点中170.4点を獲得した同社が選ばれた。校舎を保存・活用するホテルに加え、敷地内に独立した地域利用施設を提案している。地域施設としては集会所や展示スペースを設置するほか、グラウンドを地域の憩いの空間として整備し、非常時には避難所として機能させる。
跡地の敷地は7296㎡で、提案した借地料は年間6500万円。60年間の貸し付けに向け、16年度内にも定期借地権契約を結ぶ。ホテルの客室は40室程度を計画している。
市の選定委員会(委員長・八木匡同志社大経済学部教授)は、ホテルと地元施設の入り口を分けながらも両者の交流を意識した点や、観光地としての避難所機能を大幅に拡大した点などについて、「にぎわいの創出と安心・安全なまちづくりに貢献する」と評価した。
◆歴史と新たな価値
改修前の講堂・体育館 |
国内外の交流の場となるバンケットに(イメージ) |
同社は、既存校舎の保存・再生にあわせ、外構や屋上を緑化・整備して都市景観を向上させるなど、「この場所の歴史・記憶を尊重し新しい価値を創出」(同社)する計画。一方、染め物や織物、焼き物、食文化など、京都に特有な伝統技術や文化も積極的に取り込んでいく。例えば、教室を改修した客室には、京都の伝統工芸を伝承したインテリアを採用する。
講堂・体育館を改修したバンケットは既存建物の空間や構造を生かしたデザインとし、「地域と世界とをつなぐ新しい交流の場」として機能させる。国内外の企業研修などの需要獲得も見込んでいる。
一方、地域施設の展示スペースには、清水小学校の思い出の写真や動画をデータ化し、ホテル利用者だけでなく世界に発信していくアーカイブミュージアムの設置を計画している。同社は「清水地域のブランド力をより一層向上させるとともに、ICT(情報通信技術)などを活用して地域の絆を深めるコミュニティー空間を創出する」と意気込む。
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