2016/09/16

【記者座談会】真の生産性向上とは 「未来投資」にi-Con加速が課題

A 政府が「未来投資会議」の初会合を12日に開いた。会議の位置付けは。

B これまで成長戦略を担ってきた産業競争力会議と、企業に賃上げや設備投資を促すための官民対話を廃止して、成長戦略に関連する会議を再編する形で立ち上げた。成長戦略の新たな司令塔として機能を明確化した。成長戦略での「第4次産業革命官民会議」の役割も担う。議長は安倍晋三首相が務め、石原伸晃経済再生相ら関係閣僚、榊原定征経団連会長ら民間議員で構成している。
C 未来投資会議は、AI(人工知能)やロボット、ICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)などの技術革新を社会実装し、産業構造改革を進めるとともに、企業の生産性を高める第4次産業革命の推進を柱に議論していく。2017年半ばに成長戦略をまとめる。
B 初会合で安倍首相は「構造改革を総ざらいし、必要な検討に直ちに着手してほしい」と関係閣僚に指示した。会議の下には「構造改革徹底推進会合」を設け、長期投資と大胆な再編を促進する企業関連制度改革・産業構造改革や、農業、観光、スポーツといったローカルアベノミクスなどの分野を検討する。
A 会議の初弾として取り上げたのは、建設業の生産性向上だったが。
D 国土交通省が建設現場の生産性を25年までに2割向上させるとの目標を設定した。16年を「生産性革命元年」として取り組んでいるだけに、高いハードルを掲げて、i-Construction(アイ・コンストラクション)の一層の加速につなげていく姿勢がにじみ出ているように感じる。
A 2割向上という目標値に対しての反応は。
C そもそも何をもって2割向上したとするのかそこがあいまいだ。現場にかける人を2割削減すれば、達成したということになるのか。あるいは週休2日など休暇日数が増えれば、生産性が高まっていることの証明になるのか。いずれにしても何を尺度にして生産性を推し量っていくのかによって、取り組み方も変わってくるのではないだろうか。
B 生産性の向上が現場の環境改善や、そこで働く人の処遇改善に結果としてつながっていくのであれば、それは政府が掲げる「働き方改革」や文字どおり未来への投資ということになる。
A 初会合では日本建設業連合会の宮本洋一副会長もプレゼンテーションしていたけど、建設関係団体の反応はどうかな。
E 日建連は、自らの長期ビジョンや生産性向上推進要綱を後押しする取り組みとして歓迎している。ただ、「約10年での目標達成はかなり厳しい」と見る幹部もいる。建設現場へのICT導入に当たっては、当然のことながら技術力がある大手・準大手ゼネコンと、それ以外の地場ゼネコンなどで進捗度合いに差が出てくる。生産性向上の効果が現れやすい工事もあれば、そうでない工事もある。日建連の幹部もその点については「地方中小にとっては厳しい」と懸念していた。特に小規模で単純な工事ではICT導入の恩恵が表れにくいという指摘もある。
F ICTの積極的活用による生産性向上には、減少が見込まれる建設労働者への対応のほかに、週休2日の拡大などによる魅力ある産業の実現という目的もある。今後は、国が先導的な役割を果たして、直轄工事から地方自治体の発注工事へいかにスピード感をもってi-Conを拡大していくかが課題になる。
A いずれにしても、建設生産プロセスのあり方が大きく変わろうとしている分岐点にあることは間違いなさそうだ。
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