2016/09/25

【阿部興業】創業70周年記念モデル『Sevens Door』 佐藤オオキ氏とコラボし伝統技術とデザインを融合


 ドアの新しい可能性を開く--。建具や木製ドアを手掛けてきた阿部興業(本社・東京都新宿区、阿部清英社長)が打ち出した創業70周年の記念ドアモデル『Sevens Door(7つのドア)』は、空間デザイナー佐藤オオキ氏(nendo代表)とのコラボレーションによって生まれた。老舗の同社にとってはまさに常識を打ち破る製品だ。

 群馬県でスタートした同社は、伝統的な建具から一般向けから高級ドアまで、多様なドアを手掛ける高い技術力がある。記念モデルはベーシックなドアを基本に、佐藤氏のデザインと会社の個性を融合させた。社内では「うちの実力があればこんなことができるのか」と驚きの声が上がったほどだ。
 7つのドアはそれぞれ商品化を前提に製作した。製作期間は2014年11月から15年3月まで。この時期は繁忙期に当たる上に、商品の開発期間としても非常に短くタイトだった。プロジェクトは15年4月の発表まで秘密裏に進められたため、開発メンバーと阿部清光専務は、埼玉県狭山市の商品開発部と本社の間を飛び回った。
 佐藤氏の考えた方針は「阿部興業が普段使っている素材や金物を活用することを前提にしてデザインする」ことだった。2回目の打ち合わせでは3Dプリンターを使ったミニチュアと、14のドアを提案してきた。社員はその中から実現できそうなものを選ぶとともに、自分たちの技術で作れるアイデアも積極的に提案した。記念モデルの1つ「wall」では、特殊技術のVカットを使った試作品を佐藤氏に見せると「優れた技術であり、表に出したい」とデザインが変更になった。「当たり前のように使っていた技術が、実は優れた機能を持っていたのか」と社員も気づかされたという。
 このほかにも「slide」と「kumiko」には同社の伝統的な技術が生きた。ドアの上三段が横に動かせる「slide」は無双と呼ばれる障子の動かし方を気に入った佐藤氏が提案。「kumiko」はグラデーション状に木の組子がプレーンなドアに変化するつくりだ。商品部では提案を聞いて「無理かもしれない」という声が上がったが、挑戦意欲があるメンバーが集まり、職人の手仕事とドアの製作技術を持ち寄って、試作と計算、製図、調整を繰り返した。完成品を見て、佐藤氏は「やられた」と感想を漏らしたという。
 7つのドアのうち「slide」以外の6点は既に商品化した。ことし5月には阿部興業が佐藤氏の出展する米国・ニューヨークのデザインフェアで発表した新作家具のコレクション製作にも協力。今後も両思いの関係は続きそうだ。
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