2016/10/14

【キャタピラー】業種超えたプラットフォーム 「Catデジタル・プラットフォーム」とは 


 キャタピラーは、約10年前に3次元のICT(情報通信技術)建機を世界で初めて市場に投入し、世界規模でICT活用の現場を支えてきた。日本法人キャタピラー・ジャパンのハリー・コブラック代表取締役兼代表執行役員は「技術が完成し、機種のラインアップも充実している。顧客の需要と供給がうまくつながれば、市場はもっと活性化する」と期待を寄せる。年内にも、日本での販売台数に占めるICT建機の割合を倍増させる計画だ。同社の戦略を追った。



 情報化施工の現場普及が一気に進まない背景の1つには、地域建設会社にとって高額なICT建機を購入・レンタルすることが難しいという資金的問題がある。同社の販売戦略の強みは「まずは経済的負担の少ない2次元ICT建機を体感してもらい、3次元にアップグレードできる柔軟性を備えている」(コブラック氏)ことだ。

 同社の建機は音声などでオペレーターに助言する操作ガイド付きのものから取りそろえ、自動運転の建機への切り替えも簡単な操作でできる。「国交省が3次元データを使うICT活用工事を推進する一方、2次元データを使うICT工事も多く、2次元で十分だと感じている顧客もいる」と同氏は語る。レンタル会社にとっても、最小限の建機で建設業者のニーズに応えられるメリットがある。

 同社が展開している「CATコネクト」のサービスは、ドローンなどを使った3次元測量、トリンブル社の統合ソフト『ビジネスセンター』を使ったデータ加工・作成、土量計算など、ICT建機による施工だけでなく、クラウドによるデータ管理までパッケージで提供する。工事の管理者はオフィスにいながら建機の位置情報、動かした土の量、トラックの過積載についても情報を得られる。

 同氏が「建機のブランドではなく“建設現場のブランド"になりたい」と強調するように、クラウドサービス『ビジョンリンク』の強みは、自社に限らず他社の建機の状態まで一括で管理できること。使い手にとっては、現場で稼働するさまざまなメーカーの何十台もの建機の状態が把握でき、全体の効率化につなげやすいメリットがある。さらに、CATコネクトを使う建機が多ければ多いほどサービス向上のための情報が蓄積される利点もある。

 ただ、日本の市場の将来については「建機メーカーが協業しなければ、いずれソフトウェア会社が競合として現れ、建機メーカーは建機を提供するだけの存在になってしまう」と危惧(きぐ)している。だからこそ、今後は蓄積された情報を有用な情報に置き換え、顧客と同社の業績を積み上げるための提案をする『Catデジタル・プラットフォーム』の構築を見据える。

 この仕組みについて、同氏は「6層が(段階的に)積み重なったもの」をイメージしている。まずは他社製にかかわらず、すべての機器や世界中のディーラーからデータを呼び込む。これを下地となる「連結層」と位置付け、次にこのデータを統一するための通訳、変換器となる「シンフォニー(調和)」の層が重なる。3層目は、統一されたデータを蓄積するスペースを表す「データレイク」となり、クラウド化された情報を蓄積し、ビジネスに役立つ情報を提示するよう調整する。

 現在はこのデータレイクの段階で、世界のディーラー5社を選びデータの蓄積を進めているという。こうした新しいプラットフォームの開発が実現すれば、使い手は複数のデバイス(機器)を使いこなす不便さが解消でき、使い慣れたデバイスで必要な情報を受信でき、会社の業績アップにもつながるという。

 Catデジタル・プラットフォームの構築に向けて、今後は工事の効率化を図るアプリケーションを市場投入する計画だ。現場周辺の天候情報や工事が遅れた場合にどんな建機を何台投入すればいいのかを提案できるようなもので、近く導入する考え。

 松村秀雄ICT担当部長が「スマートフォンでいえば、米アップルのプラットフォームであらゆる企業がアプリを提供しているようなイメージ」というように、アプリ作成はディーラーや顧客など業種を超えて企業の参画を促す。業種を超えてさまざまな企業が参画できる土壌こそが、ICT建機を次なるステージに導く可能性を秘めているといえる。

建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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