出会いは突然の電話だった。2013年4月、聖音会の佐竹昇平施設長から「施設建て替えのプロポーザルに参加してほしい」と電話があった。類似施設のプロポーザルに採用されたことから連絡をしたそうだ。これが知的障害者支援施設「さがみ野ホーム」に携わるきっかけとなった。
計画を練るため、既存施設を見学すると、職員の「優しく、明るく、労を惜しまない思いやりのある姿勢」に驚かされた。施設の基本であるキリスト教の精神が根付いていた。聖音会のルーツは佐竹施設長の祖父であり、日本で保育という言葉をつくった故・佐竹音次郎氏が創立した「鎌倉小児保育院」にある。「聖愛一路」を理想に掲げ、福祉事業を展開し、先駆的役割を果たしてきた。施設はこの歴史を受け継ぎ、高齢な知的障害者の入所支援施設として先進的な建物だった。
審査の結果、コンセプトに「みんなでつくり、みんなで暮らす家」を掲げた金子設計の提案が最優秀賞に選出された。職員との対話や聞き取りを十分に行い、設計に反映した。建物計画は、思い出を引き継ぐランドスケープデザインとともに、「快適で清潔な暮らしができる施設」「職員の労力軽減」「居ながら工事に対しての安全確保」を図り、富士山を眺められる富士見テラスなどの特徴を付与した。施主、設計事務所、施工者の思いを1つに収束し、三位一体の思いを形にする機会になったという。
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