2016/10/09

【建築】福祉の精神紡ぐ“みんなで暮らす家” 金子設計の「さがみ野ホーム」


 出会いは突然の電話だった。2013年4月、聖音会の佐竹昇平施設長から「施設建て替えのプロポーザルに参加してほしい」と電話があった。類似施設のプロポーザルに採用されたことから連絡をしたそうだ。これが知的障害者支援施設「さがみ野ホーム」に携わるきっかけとなった。

 計画を練るため、既存施設を見学すると、職員の「優しく、明るく、労を惜しまない思いやりのある姿勢」に驚かされた。施設の基本であるキリスト教の精神が根付いていた。聖音会のルーツは佐竹施設長の祖父であり、日本で保育という言葉をつくった故・佐竹音次郎氏が創立した「鎌倉小児保育院」にある。「聖愛一路」を理想に掲げ、福祉事業を展開し、先駆的役割を果たしてきた。施設はこの歴史を受け継ぎ、高齢な知的障害者の入所支援施設として先進的な建物だった。
 審査の結果、コンセプトに「みんなでつくり、みんなで暮らす家」を掲げた金子設計の提案が最優秀賞に選出された。職員との対話や聞き取りを十分に行い、設計に反映した。建物計画は、思い出を引き継ぐランドスケープデザインとともに、「快適で清潔な暮らしができる施設」「職員の労力軽減」「居ながら工事に対しての安全確保」を図り、富士山を眺められる富士見テラスなどの特徴を付与した。施主、設計事務所、施工者の思いを1つに収束し、三位一体の思いを形にする機会になったという。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【建築】古民家再生で被災地復興 ア・シード建築設計の米倉建築 東日本大震災の被災地に近い栃木県佐野市にある山田邸の改修工事の設計に当たり、ア・シード建築設計(埼玉県川口市)の並木秀浩代表は「建築における再生デザインの可能性を示すことで、壊れてしまった町に住み、明日に対して不安を抱く被災地の人たちの元気を取り戻したい」というメッセージを込めたという。築後100年を超え、土台が傾いた古民家の歴史性を継承し面影を残しながら「いま」を生きる形に再生し、住む人に新たなやりがいをもたらすことで、復興のイメージと重ね… Read More
  • 【建築】JIA新人賞に保坂猛氏、前田圭介氏が輝く 25年賞、環境賞も掲載 Daylight house 日本建築家協会(JIA)は2日、JIA新人賞、25年賞、環境建築賞を発表した。第24回JIA新人賞には、Daylight Houseを設計した保坂猛氏(保坂猛建築都市設計事務所)とアトリエ・ビスクドールを設計した前田圭介氏(UID)が選ばれた。 アトリエ・ビスクドール(撮影:上田宏) 同日の発表会で保坂氏は「どんな敷地でも、建築は自然や環境との豊かな関係を提案できることを再認識した。このような地道な活動を… Read More
  • 【建築】石原健也氏が最優秀に 守山中学校改築コンペ 石原健也氏(デネフェス計画研究所)の提案 滋賀県守山市は、守山中学校校舎改築に伴う公開設計コンペの第2次審査を実施した結果、石原健也氏(デネフェス計画研究所)の提案を最優秀作品に決めた。2月下旬に随意契約し、11月下旬までに設計をまとめる。次点は新居千秋氏(新居千秋都市建築設計)だった。2014年度の着工、15年度の完成、16年度の供用を目指す。 石原氏の提案は、江戸時代の浮世絵師・安藤広重が描いた守山宿の風景や街道に連ねた家々をモチーフと… Read More
  • 【建築】住宅部門はユウハウスとオルハウスに JIA九州支部の「建築九州賞」 住宅部門作品賞 ユウハウス(撮影:Toshihisa Ishii)   ◇一般建築は宇土小学校に  日本建築学会九州支部(藤本一壽支部長)は、2012年度第6回建築九州賞(作品賞)に、住宅部門は「ユウハウス」(設計=松山建築設計室)と「オルハウス」(設計=イノウエサトル建築計画事務所)、一般建築部門は「宇土市立宇土小学校」(設計=シーラカンスアンドアソシエイツ)に決定した。また、JIA特別賞には「電気ビル共創館」(設計=西日本… Read More
  • 【建築】日本建築大賞に陶器浩一氏の「竹の会所」 協会賞は新居千秋氏 竹の会所(撮影:堀田貞夫) 日本建築家協会(JIA)は2日、東京都渋谷区の建築家会館で2012年度優秀建築選公開審査会を開き、第8回日本建築大賞に陶器浩一氏(滋賀県立大)が設計した「竹の会所」を選んだ。協会賞は、新居千秋氏(新居千秋都市建築設計)の「由利本荘市文化交流館カダーレ」、堀場弘氏・工藤和美氏(シーラカンスK&H)の「金沢海みらい図書館」、渡辺真理氏・木下庸子氏(設計組織ADH)・新谷眞人氏(オーク構造設計)の「真壁伝承館」… Read More

0 コメント :

コメントを投稿