国土交通省と東日本、中日本の両高速道路会社が進める東京外かく環状道路(関越~東名)。国内最大となる直径16.1mのシールド機で大深度地下トンネルを構築する本線シールド工事が、着工に向けて準備が進んでいる。東京都世田谷区の東名ジャンクション(JCT)の工事現場では、先行する「北行」「南行」のシールド機を地下約70mの発進立坑内で組み立て中。大泉JCT(練馬区)側から発進する2機のシールド機は、各工場で製作が最終段階を迎えている。準備が整い次第、“未知の領域”に挑む大規模土木プロジェクトが本格始動することになる。
東京外環(関越~東名)は、関越道大泉JCTから中央自動車道を経て、東名高速道路の東名JCTを結ぶ約16.2㎞、片側3車線の計6車線の高速道路。東名JCTから北へ向かう「北行トンネル」(直径15.8m)と大泉JCTから南へ向かう「南行トンネル」(同)の本線トンネル2本を、泥土圧シールド工法でそれぞれ大泉、東名両側から計4機のシールド機で掘り進め、井の頭通り付近(武蔵野市)の大深度地下で接合する。
トンネル断面は、中央環状品川線(12.3m)を超えて国内最大。シールド機1機当たりの掘進距離も東名立坑発進が約9.2㎞で最長、大泉立坑発進も約7㎞で品川線(約8㎞)に次ぐ長距離掘進となる。国交省東京外かく環状国道事務所の大胡賢一計画課長は「市街地の大深度地下を利用したトンネル構築が大きな特徴。シールド工法による国内最大のトンネル工事となる」と説明する。
その“主役”が4機のシールド機。「東名JCT側の発進立坑では、2機のシールド機を組み立て中。大泉JCT側の2機は、それぞれ工場で製作を進めている」(大胡課長)。
本線トンネル(北行)東名北工事で使うシールド機は、泥土圧式シールドで外径16.1m、機長約15.1m、重量約3700t。カッターヘッドは、中央と外周の2重リング構造が特徴。超硬合金チップの鋼製刃(ビット)は、先行ビット(高)148個、同(低)212個、カッタービット548個、カッタービット交換装置52個、レスキュービット22個。非常時にカッタービットを機内から交換できる。
現場では、土砂をストックするピットやセグメントのストックヤードも整備を進めている。
一方、大泉側から掘削する本線トンネル(南行)大泉南工事で使用するシールド機は、直径16.1m、機長約15m、重量約4000t。カッターヘッドには「支障物切削用ビット」「長寿命化ビット」など5種類計1008個のビットを設置。高さの異なるビットで掘り進めることで耐久性を高め、交換なしに10㎞以上を掘進できるとみている。「昼夜連続による1日当たりの掘削距離は最大約30mを見込む」(同)。ジャパントンネルシステムズが製作し、横浜市のIHI横浜工場でシールド機面盤など前胴部の工場試験を実施。後胴部は、JFE鶴見工場で製作している。
(北行)東名北工事で使うシールド機。800トン吊りのクレーンで
カッターヘッドを立坑下に投入した
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大泉側のもう1機のシールド機は神戸で製作中。大泉JCTの現場では、立坑を構築中。「立坑工事が完了次第、シールド機を現地に運び、組み立て始める」(同)。
4機のシールド機の発進時期は今後決めていくが、大胡課長は「可能な限り前倒しで作業を進めていきたい」と話している。 本線トンネルの発注者と施工者(カッコ内はシールド機製作者)
〈中日本高速道路東京支社〉
▽本線トンネル(北行)東名北工事=大林組・西松建設・戸田建設・佐藤工業・錢高組JV(三菱重工メカトロシステムズ)
▽本線トンネル(北行)大泉南工事=大成建設・安藤ハザマ・五洋建設・飛島建設・大豊建設JV(三菱重工メカトロシステムズ)
〈東日本高速道路関東支社〉
▽本線トンネル(南行)大泉南工事=清水建設・熊谷組・東急建設・竹中土木・鴻池組JV(ジャパントンネルシステムズ)
▽本線トンネル(南行)東名北工事=鹿島・前田建設工業・三井住友建設・鉄建・西武建設JV(川崎重工業)
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