2016/10/08

【現場最前線】山岳トンネル技術の“展覧会”! 長門俵山道路大寧寺第3トンネル北工事


 飛島建設が、掘削断面積100㎡を超える大断面山岳トンネルの「長門俵山道路大寧寺第3トンネル北工事」(発注者=国土交通省中国地方整備局)を山口県長門市で進めている。同社と原商(松江市)がトンネル吹付コンクリートの品質管理向上のために開発した「スマートバッチャープラント」やICT(情報通信技術)を活用した現場監視システムなど各種新技術も活用している。写真は切羽でのコンクリート吹きつけ

 長門・俵山道路(同長門市俵山小原~同市深川湯本)は、山口県下関市と長門市を結ぶ国道491号線のうち、豪雨災害でたびたび通行止めとなる区間の代替路として整備する。最も北側に位置する大寧寺第3トンネル(総延長1873m)の北工事は、北側長さ1224mを掘削する。掘削断面は、中央分離帯の配置とS字線形にあわせた勾配確保によって、一般の国道断面としては珍しい108.2-126.6㎡となる。掘削幅は約14.5mに及び、「両端で土質が異なる部分も出てくる」(渡邉博大寧寺トンネル作業所長)という大きさだ。
 2015年9月の契約後、16年4月に掘削を開始。現在は、長さ約190mを掘り、進捗率は17.6%だ。まだ“序盤戦”だが、13年度に土木学会の技術功労賞も受賞した渡邉所長は「品質確保と技術提案の正確な履行に配慮して掘削を進める」と話す。
 吹付コンクリートには、温度センサーを付けたミキサーで季節・昼夜を問わず練り混ぜ温度を一定に保ち、品質を安定させる「スマートバッチャープラント」を採用した。練り混ぜデータと施工データによる材料・品質の自動管理とデータの遠隔取得で、省力化も図る。ズリ出しでは、15m3の大容量コンテナを坑内で仮置きしながら掘削サイクルや昼夜間のタイミングに合わせて搬出できる「トンネルコンテナ(TC)工法」を採用。切羽や現場内にはカメラを配置し、インターネット経由でスマートフォンなどから常時確認できるシステムも整えた。このほか、発破時の超低周波音低減対策やコンクリート厚さ45cmの防音扉など、さながら山岳トンネル技術の“展覧会”という状態だ。
 西森利長副所長は「トンネル中間部に断層が想定されており、薬液注入などの補助工法も検討している」と準備に余念がない。18年3月末の工期末に向け、新技術と事前の入念な準備で、品質・安全を確保し続ける。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿