2016/10/09

【リファイニング建築】老朽不動産再生の切り札 三井不動産、ミサワホームが青木茂建築工房と相次いで提携


 老朽化したマンションの再生など既存ストック活用の促進に、青木茂氏の「リファイニング建築」が、いま注目が集めている。三井不動産、ミサワホームが相次いで、青木茂建築工房とリファイニング建築に関する業務提携を結んだ。建て替えよりコストが抑えられることに加え、確認申請を改めて提出し、検査済証を取得することで、老朽施設を資産価値のある建物に再生できる。これまで実績を積んできた手法をさらに拡大したい同工房と、クライアントに新たな選択肢を提案したいディベロッパーやハウスメーカーがタッグを組むことで老朽建築物の再生へ新たな道を開く。画像は三井不動産との初段プロジェクト「早宮サンハイツ」イメージ

 リファイニング建築は既存躯体の約80%を再利用しながら、建て替えの60-70%のコストで、意匠の転換や用途変更、設備一新を行い、建物の長寿命化を図る再生手法。既存建物の状況把握の後、既存不適格の証明を行い、既存不適合事項や単体規定については、全て現行法に適合させる。特に構造については調査、診断、補強を行った上で、工事過程の家歴書(建物の履歴書)を作成する。構造躯体の信頼性を明確化して、新たに確認申請書を提出することで竣工後に、完了検査済証の交付を受けることができる。
 青木氏は「旧耐震か新耐震かどうかや築年数は関係ない」と同工法への自信を口にする。リフォームやリノベーションに注目が集まっている現状については「自分がクライアントだったらということを一番に考えている。外観や内装など見た目だけをきれいにしても耐震基準を満たしていない建物には住みたくない」と話す。
 8月に業務提携を結んだ三井不動産とは、東京都練馬区で初弾プロジェクトの「早宮サンハイツリファイニング工事」を進めている。1977年に建設した共同住宅で、耐震補強すると同時に増築・大規模模様替え・大規模修繕を行う計画。現在のニーズに合う間取りに変更し、エレベーターを新設する。耐震補強を施し、Is値(構造耐震指標)を0.6以上確保する。
 オーナーの男性は「三井不動産が催した青木氏のセミナーに参加し、リファイニング建築で整備することを決めた。耐震診断でIs値が不足していると判明して以降、新規入居者が減っていたので、建て替え、売却など検討していたが、コスト面や環境負荷が少ないことが決め手となった」と話す。

リファイニング解体工事の様子

 三井不動産グループは、リファイニング建築を活用し、耐震性で問題を抱える建物の改築事業をワンストップでサポートするコンサルティングサービスを開始した。全体のコーディネートや事業推進の前段でネックとなる相続、権利関係の調整、事業性能の検証などを支援する。改修後は賃貸事業の安定化を目的に三井不動産レジデンシャルリースがサブリースし、長期融資の枠組みも活用できることから、賃貸事業としての再生の可能性を高める。
 事業を通じて耐震化における課題を解決することで「国や東京都が掲げる耐震化率の目標達成、減災に寄与するほか、空き家問題の解決や中古住宅の流通促進など、これまで既存ストック活用でネックとなっていたさまざまな問題解決の糸口になる」(三井不動産)と期待を寄せる。
 ミサワホームとの提携では、東京都渋谷区にある築後50年超の公務員職員住宅をリファイニング建築で再生し賃貸住宅として活用する。64年建設の既存建物(RC造4階建て延べ1017㎡)を再利用し、現在の3DK18戸を1LDKを中心とした21戸のプランに一新する。3カ所ある階段室を1カ所にし、新たに内廊下とエレベーターを設置するなど利便性の向上も図る。
 ミサワホームは、14年度から17年度の中期経営計画の中で事業多角化を基本方針に掲げ、リフォーム事業や資産活用事業といったストック関連事業への取り組みを強化している。都市部の再開発・再生ニーズを踏まえオフィスや商業施設などの開発・リファイニング建築に取り組むとともに、開発物件を含む不動産の保有・運用の拡大を図り、不動産事業の拡充を目指す。
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