新日鉄住金エンジニアリングの分社以降、建築技術系の新卒採用で初めての女性社員として、2008年の入社後から国内物件の建築の設備設計に携わる。入社後は同社北九州寮の物件で、独自のスマートヒートポンプシステム導入などに携わり、週に1回は遠方への出張をこなすなど着実にキャリアを積み上げてきた。育児休暇を経て15年10月に現部署に復職、現在は主に関東圏の物流施設の空調や給排水の設備設計を担当している。
夫は別のエンジニアリング企業に勤め、モンゴルへ4年近く単身赴任している。現地の医療事情などから帯同せず、家事や育児を1人でこなす。「夫とは結婚後、2カ月以上一緒に暮らしたことがない。何事も自分のペースで進められる気楽さもある」と気丈に笑うが、出産を機に働き方は変わったという。
それまでは1つのプロジェクトを1人で一貫して担当するのが原則。職場の理解もあり、復職後は2つのプロジェクトを後輩とペアで担当している。2人で業務を分担することで、急なキャンセルが可能な打ち合わせや内勤を中心に、出張は日帰りのみにセーブできている。息子の急な発熱など「明日は来られないかもしれないと毎日覚悟している」からこそ「業務進捗をその都度、後輩に引き継ぎ、自分だけが情報を抱えることがないようにリスクヘッジを欠かさない」。働き方は変わっても「キャリアが分断されるわけではない。いずれはごみ処理施設や工場系プラント設備にも携わり、技術者としてスキルアップしたい」
5年ほど前から「打ち合わせをする企業や職人にも女性が増え、活躍できる環境が整ってきた」印象がある。同社の藤原真一社長は子どもを肩車して保育園に送迎した経験もあり、女性社員との率直な意見交換を大切にしている。こうした取り組みもあり、女性技術者は徐々にではあるが増えつつある。だからこそ「優先枠のある病児保育所があれば、万が一の受け皿になるのでは」と期待を寄せる。
「社員がいきいき働いていた姿が忘れられなかった」のが入社の決め手。北九州に異動になり「自ら設計した北九州寮に1年間住んだことも忘れられない」。同社のコーポレートメッセージは「その情熱で、先端へ」。「女性活躍でも“先端”を目指してほしい」と思いを込める。
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