2016/12/17

【探訪!大学研究室】オフィス空間も独居高齢者支援もデザインで考える 東京電機大 渡邊研究室


 東京電機大学未来科学部建築学科空間・環境デザイン研究室の渡邊朗子研究室は、「ウェアラブル光トポグラフィ」という人の脳の働きを可視化する機器を使って、建築が脳活動に与える影響を研究している。今回、学生50人を被験者として行った実験で、知的活動時に色彩と空間の大きさが影響を与えることが分かった。研究は、オフィスや教育施設の設計時に、執務ブースの色と大きさといったデザインに生かせる可能性があるという。写真は開発中の独居高齢者の見守りシステムのデモをする嶋優之介さん

 光トポグラフィは、人の前頭前野の脳活動量を視覚化する機器で、リアルタイムで脳活動が活発な場所をサーモグラフィのように示す。今回の実験では、奥行きと高さは一緒で、幅が2倍に異なる大小のブースを用意し、それぞれ内部を白と黄色に塗り分けた状態で実験を行った。
 その結果、空間が大きい方が計算などの正答率が上がることが分かった。また色彩と空間の組み合わせが、活動や疲労、気分にも影響を及ぼす可能性もあるという。
 渡邊准教授はこれらの結果を受けて「今後、物的環境デザインの要素に注目し、どんな空間デザインが人の知的活動を最も支援するのか明らかにしたい」と話している。研究は、建築学専攻修士1年の馬場哲平さんが行った。
 また同研究室は、高齢者とロボットが共生する住空間も研究している。今後さらに増加が見込まれる独居高齢者の見守りという課題に対して、ロボットやIoT(モノのインターネット)技術を生かして住空間をデザインするという試みだ。
 高齢者の居間などに、会話ができるインタラクティブ・ロボットを置き、朝夕や薬を飲む時間などに、ロボットが声掛けする。また高齢者がロボットに話しかけた場合も応答してコミュニケーションを形成する。
 そのやりとりなどを通して、家族や自治体などに生活状況を伝えたり、メッセージを送信することも可能だ。
 研究室では、このような生活支援ロボットと共生するリビング空間をデザインするため、巣鴨地蔵通り商店街で高齢者100人にアンケートも実施した。
 この調査で、購入できる適正な価格、望まれる会話内容やロボットの行動、緊急時に期待することなどをとりまとめている。
 研究に取り組んでいる学部4年の嶋優之介さんは、「こうした調査を積み重ねて、建築という側面から、高齢者を見守れる空間をつくりたい」と話している。
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