街がクリスマスに浮かれ出す12月後半、新たに渋谷へ移転したニフティが運営するイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」へ「日本ダムアワード2016」の取材に潜入してきました!
お台場から渋谷に移転したニフティ「東京カルチャーカルチャー」は、渋谷駅から徒歩10分足らず、とても便利な立地のおしゃれなビルの中。オープニングパーティーでは三竹兼司社長が人間大砲で飛ぶ、という趣向で度肝を抜かれましたが、会場はスクリーンも見やすくなっています。
東京カルチャーカルチャー 渋谷移転記念パーティーでの三竹兼司社長 |
おしゃれな入り口 |
会場内。今年はダムカレーは提供されていなかったようです |
ダムアワードとは、「一年間のダムの活躍を振り返り、ダムファン有志による選考委員が様々な角度から活躍したダムをノミネート。 選考委員と観客の皆さんによる投票で、各部門で今年もっとも印象に残る働きをしたダムを選出し、その功績を讃えよう、というイベント」です(日本ダムアワード公式ホームページより)。
ノミネートされたダムだけでなく全国のあらゆるダムが非常時も通常時も運用が続けられ、任務を果たしています。萩原さんが毎回コメントされるように、目覚ましい活躍も災害のニュースにもならないほうがよいのですが、果敢に立ち向かうダム(と中の人)をファンやマニアが讃えるアワードなのです。
■放流賞
ノミネート:津軽ダム、上椎葉ダム、味噌川ダム、二瀬ダム、豊稔池、高根第二ダム、糠平ダム、浅瀬石川ダム、新豊根ダム
今年は放流が各地で多く行われ、「10年前には考えられなかった」とコメントするプレゼンターも。めったにない新設ダムの試験湛水には全国からマニアが集結するのだとか…。津軽ダムの試験湛水には会場からも10人ほど駆けつけた模様。
上椎葉ダムの設備点検による放流の見学は、まさかの2日前に告知。プレゼンターは告知を見た瞬間に飛行機のチケットを確保し見学したそうです。放流は実は頻繁にあるのだが、台風の際などは現地に行き着くこと自体ができないですよね…とため息をつく壇上の皆さん。地元とコラボしてダムカレーやダムクッキーが振る舞われ、地域をあげてのイベントになっていたそうです。
上椎葉ダム、放流見学の告知は2日前 |
二瀬ダムは公共交通機関で来場してくださいという告知があったが、どうやってたどり着けばいいのか頭を抱えることに…しかし、なぜか現地の駐車場は満杯だったとか。
豊稔池はヨーロッパの古城を思わせるたたずまいからの見事な放流だったが、なんせ水が臭うとのこと。地元の人たちも遠巻きに眺めていたのだそうです。
スキージャンプ式洪水吐の放流は人気が高く、高根第二ダムの放流動画が流れると会場から感嘆の声が上がります。
見事なスキージャンプ式洪水吐の高根第二ダム |
糠平ダムは発電用のためめったに放流がないが、台風11号によって5年ぶりの放流。
浅瀬石川ダムは地元を巻き込んだイベントとして開催。最近は地元地域と連動して観光(インフラツーリズム)として盛り上げようという傾向が強くなってきているが、ダムマニアとしてもぜひ広がってほしいとのこと。告知などをもう少し工夫すれば、さらに集客が見込めるのではないでしょうか。
新豊根ダムは点検中にクレストゲートから放流というレアなもの。会場からはどよめきが。
■低水管理賞
ノミネート:利根川上流8ダム、早明浦ダム、羽鳥ダム
潜入も3回目になると、いろんなダムの役割が理解できるようになるわけですが、低水管理がもっとも必要とされるのが農業分野。降雨があるべき時期に降らない、少雨の時期でもあまりにも降らないとお米ができなくなる…ということなんですね。このプレゼンテーションは数字や気象情報などデータでがっちりで説明し、洪水調節賞のようなドラマチックな展開はないのですが、毎回「そうだったのか…」と深く頷いてしまいます。利根川上流8ダムを「TONEGAWA-∞」(トネガワエイト)として紹介され、フフッとなりました。
TONEGAWA-∞(トネガワエイト)!! |
早明浦ダムのプレゼンの最後に萩原さん作ったショートムービー「シン・サメウラ」はもっとじっくり見たかったと感じました。
このフォントが入ると、盛り上がってしまいます |
2016年は全国的に少雨傾向でしたが、米の作況は102%とダムによる低水管理も大きく貢献したのではないでしょうか。
悩みながら投票用紙に記入 |
投票用紙回収! |
ノミネート:天ヶ瀬ダム、鹿野川ダム、丸山ダム、蓮ダム
天ヶ瀬ダムの「観光資源化社会実験」は、花火が3年連続で中止となり、何かイベントを!と京都精華大学との官民連携で開催。幻想的なプロジェクションマッピングでダムの観光資源化の実験となりました。会場からは2名が参加。
天ヶ瀬ダムのプロジェクションマッピングには、地元キャラも登場! |
鹿野川ダムの「トンネル貫通見学会・洪水吐トンネルフリーウォーキング」は改善工事現場見学です。一般の人はめったに見ることのできないトンネル貫通の瞬間(貫通石のおみやげ付き)に洪水吐トンネルフリーウォークは1200人が参加し、ヘルメット待ちの長い行列ができていたそうです。
貫通する瞬間の動画には会場から歓声が! |
丸山ダム「60周年記念イベント『大人の社会見学』」は、マニアにはおなじみ森湖関連イベントですが、暑い時期の開催ということでプチ写真展が施設で開催され、涼をとるスペースとなるなど配慮が行き届いていたそうです。めったに見られない場所を隅々まで見学でき、洪水を想定したゲートの開閉シミュレーションを体験できるなど、マニアも大満足。国交省の作業着も着せてもらえたそうで…シミュレーション体験といえば鉄道マニアの十八番でしたが、ダムもここまで来ました!と感慨深げなプレゼンターさん。
丸山ダムのゲート開閉シミュレーション体験 |
蓮ダム「放流体感ツアー」管理開始25周年の記念イベントで、“中の人”手作りのDVDが放映されて解説を聞き、なんとおみやげにそのDVDが配布されたのだそう。放流ボタンを押せるなどマニア垂涎のイベントだったそうです。放流ボタンを押すのは大人・子ども関係なくジャンケンで決めたそうで「譲れない戦い」が繰り広げられたのだとか。
蓮ダムの働きを解説するDVDやパンフなどお土産に |
■洪水調節賞
ノミネート:中筋川ダム、札内川ダム、金山ダム、浅虫ダム
この賞は毎年ドラマチックです。特に今年は予測できない動きをした台風10号との戦いが注目されました。
マニアからは“デザイナーズダム”と呼ばれる美しい外観の中筋川ダムはゲートのない自然調節式のダムで、台風16号で戦後2番目の水位を記録するも有岡樋門では約125センチの水位低減を達成しました。
十勝川水系の札内川ダムは流域が広い上に台風が立て続けに北海道に上陸し、マニアとしては夜中でも目を離せない状況が続いたそうです。
同じく北海道の金山ダムは「ただし書き操作」が行われ、上流域で堤防が決壊し浸水被害が発生する中、下流域の被害を最小限にくい止めました。
2016年は「あいつ」(台風10号)が暴れ回りました |
青森県の浅虫ダムは高さ9メートルのごくごく小さなダムですが、海に直接放流するという珍しいダム。JRの線路や国道をくぐって水が海へとワープするのです。迷走した台風10号による被害を見事にくい止めたわけですが、プレゼンターの琉さんは「台風の前にダムの大小は関係ない。下流を守るのがダム」とコメントしました。
■臨時部門賞 ライトアップ賞
ノミネート:大山ダム、浅瀬石川ダム、津軽ダム、月山ダム、湯田ダム、二瀬ダム、下久保ダム、湯原ダム、中筋川ダム、三国川ダム、川俣ダム、浦山ダム
ある意味、斬新だった湯原ダムのライトアップ |
あらかじめノミネートされた12のダムを事前にウェブ上でファンが投票して決められました。日や月でライトアップの色が変えられたり、21時まで開催して「都内で仕事を終えてからでも見に行ける」二瀬ダムや、星空鑑賞会とセットで行われた川俣ダム、偶然クリスマスシーズンに照明の点検をしている浦山ダム、温泉マークを投影した斬新な湯原ダムなど、ますますダム×観光が進むことが期待されます。
受賞したダムに贈られる「金のクレストゲート像」 |
そして、いよいよ大賞は金山ダムに決定!
放流賞:上椎葉ダム、イベント賞:鹿野川ダム、低水管理賞:羽鳥ダム、洪水調節賞:金山ダム、ライトアップ賞:月山ダムとなりました。
インフラツーリズムが推進されるなど、ダムと地域を観光で活性化させる取り組みはますます進んでいきそうです。もちろん、こういった動きの前からダムを見続けるマニアの皆さんからは、告知の時期や工夫、駐車場などによってもっと一般の人たちにもアピールできるはずだという意見が出ていました。主催の萩原さんは「来年も台風など多くの自然の皆さんが向かってくるでしょう。ダムも、その中の人も建設に携わる人たちもますますがんばってもらいたい」と締めくくりました。
プレゼンター
萩原雅紀(ダムライター、デイリーポータルZ・HP「ダムサイト」管理人)
琉(ダム王子・HP「DamJapan」管理人)
炭素(日本ダム協会 ダムマイスター)
佳(日本ダム協会 ダムマイスター)
damjin(ダム愛好家)
夕顔(日本ダム協会 ダムマイスター)
星野夕陽(日本ダム協会 ダムマイスター)
日本ダムアワード公式ホームページはこちら
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