埼玉県北本市の由緒ある寺院「安養院」の客殿など新築工事が完成し、11月3日に落慶法要が営まれた。設計を手掛けた片渕重幸氏(片渕設計事務所代表)は、先代の父・勝利氏が約40年前、庫裡(くり)の設計を手掛けた同寺院から仕事を依頼された時、ヨーロッパの建築家と施主である夫婦の心の通った物語を重ね合わせた。
「夫婦が若いころに建てた家が、長い年月を経ても改築する必要がないことに感謝し、建築家に手紙と小切手を送った。建築家はこの経験を糧に一層仕事に励んだという話だが、建築家に対する施主の印象と信頼が長年受け継がれているところが、今回の安養院の仕事とも共通しており、その大切さを改めて実感した」と振り返る。
今回の新築工事に伴う設計依頼は5年前。安養院の住職も子息に代替わりしていたが、「立派な庫裡をつくるために、職人と議論しながら厳格に仕事と向き合う父の話を先代住職から聞かされていたことなどを語っておられた。代替わりしても継承される信頼関係の深さに感謝しながら仕事に取り組んだ」と語る。敷地条件などを考慮し、庫裡も改築することになったが「先代の心が受け継がれていること」を強く意識しながら、正面に客殿、その裏に庫裡、離れを配し、立派な建物に仕上げた。建築家として「歴史を受け継ぎ、いまを生きている意味をこれからも大事にしたい」と強調する。
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