2016/12/27

【建築学会】ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館コンペから日欧の共通課題と差異を議論


 日本建築学会は、「ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館」を題材として、都市とアート、社会と共有する建築文化を考える「都市とアートの文化考」を東京都港区の建築会館ホールで開いた=写真。77の国から1715点もの応募があった同美術館の国際コンペの概要や最優秀案に対する評価などを通して、日本とフィンランド=欧州諸国との差異や共通する課題などを議論。一方で財政上の理由から建設費用に対する公的予算拠出が否決され、同美術館の建設計画が事実上頓挫したことを受け、今日の社会情勢の中で建築や都市が置かれている困難な状況を確認する場ともなった。

 第1部では同コンペの審査員を務めた建築家の塚本由晴氏(東工大大学院教授/アトリエ・ワン)が審査のプロセスや評価軸などについて説明。東日本大震災の被災各地で復興計画や復興事業の設計者選定に携わる小野田泰明氏(東北大大学院教授)は独仏などとの比較を通じて日本の設計者選定の課題などを指摘した。
 第2部は最優秀となったモロークスノキ建築設計(仏)を共同主宰するニコラ・モロー氏と楠寛子氏が、「アート・イン・ザ・シティ」をテーマに、「フラグメント(断片)」を組み合わせた集合としての美術館を提案したコンペ案のポイントなどを紹介。それをもとに金沢21世紀美術館キュレーターの鷲田めるろ氏と塚本、小野田両氏も交えて21世紀の美術館像や、都市とアートのあり方、その可能性などを論じ合った。
 この中で塚本氏は、ビルバオ・グッゲンハイム美術館に象徴される「アイコニックな建築による美術館づくり」を見直す流れの中にヘルシンキのコンペもあったと位置付けた上で、最終6案に絞った後の審査では「セッションを重ねるほどビジュアルインパクトのある案は支持を失い、21世紀の美術館がどうあるべきかが審査の中心になった」と語った。
 また、「コンペを企画、デザインするプロの事務所」をコンペマネジャーに起用した点も日本にはない特徴とし、「情報管理を含め、プロの知見を入れて公開性を担保しながら運営した。社会の中のコンペのあり方として日本とは違うし、学ぶべきところがある」と強調した。
 小野田氏はわが国の設計者選定の現状について、「プロポーザルの割合が増えてはいるが、まだ全体の2、3%。6割は依然として入札であり、空間の質を高めるような話にはなかなかならない」と指摘。独仏など欧州諸国では「法律や職能というしっかりした土台」の上でコンペが行われているのに対して、日本は「基本的に属人的であり、すばらしいコンペを開催するケースはあってもイベントで終わり体系化しない」などと語った。
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