2016/12/17

【首都高速道路会社】首都高を災害時の緊急ルートに! 初動対応のに軽量化資材開発


 首都高速道路会社が道路啓開の技術開発に力を入れている。同社保全・交通部点検・補修推進室の木伏基補修推進課課長代理は「首都高速道路を災害時の緊急車両ルートにするため、防災対策用緊急資材を民間企業とともに開発してきた」と強調する。土のう、スロープ、渡し板という一見どこにでもありそうな緊急資材だが、これまでの経験を生かし、迅速な初動対応がしやすいような工夫が随所に見られる。写真は11月のハイウエイテクノフェアで展示された一連の資材

 東日本大震災では、首都高に20カ所程度の段差が生じた。主桁が支承からずれてしまい、通行車両が立ち往生し、緊急車両が思うように移動できない課題も浮き彫りになった。段差を解消するための緊急用として、土のうや敷鉄板などを配備していたものの、人力で運搬・設置するには時間がかかった。運びやすいことを前提に、民間企業との開発がスタートした。

1週間持ちこたえれば復旧は格段に進む

 積水化成品工業と1年間かけて開発した軽量段差解消材『EPSスロープ』は、軽量だが圧縮強度のある発泡ポリスチレン(EPS)を表面保護材と一体化することで、大型車両の連続走行も可能にした。3分割して保管でき、1部材の最大重量は30㎏と作業員が迅速に運べる範囲内に収めた。
 スロープは長さ3000mm、幅1000mm。高さは300mm、200mm、100mmの3段階を用意し、その組み合わせによってあらゆる段差にも対応できるように工夫した。これまでは土のうと敷鉄板を組み合わせ、路面段差を修正してきたが、設置にはある程度の人数が必要だった。特に敷鉄板の運搬・設置にはつり上げ機材を搭載した車両が不可欠となり、被災状況によっては作業場所までたどり着けない懸念もあった。
 土のうの中身についても新素材を開発した。桁の段差に加え、開き個所が発生する可能性もあり、これまでの土詰めよりも軽量化を図るため、発泡ガラスを使うアイデアを具現化した。土詰めの土のうは15リットル容量の場合、重量が約25㎏にも及ぶ。発泡ガラスを使うと、約6㎏にまで軽減できる。

1人でも楽に持ち運べる軽量を実現

 発泡ガラス入りの土のうを敷き詰めた上には、ゴムマットを置くことで大型車両のスムーズな通行も可能にさせた。実験では20tの大型車両が10回通行しても発泡ガラスは多少つぶれるが、走行に支障はない。ゴムマットはタイヤとの摩擦による土のう袋の破れを防ぐ効果もあった。軽量であることから、耐候性フレコンバッグの中に、軽量土のう50袋をひとまとめにして保管できるメリットもある。
 最大50cm幅で路面が開いた状態になることも想定し、橋渡し材『F-Deck』も開発した。FRP(繊維強化樹脂)を材料とし、サイズは長さ1400mm、幅700mm、高さ90mm。重さは約30㎏に抑え、運搬や設置もしやすくした。
 8月末の防災訓練では、段差や開きなどの被害を再現し、実際に緊急資材が役に立つかも検証した。補修推進課の工藤晃也主任は「新たな土のう、スロープ、渡し板を組み合わせれば、あらゆる状況に対応できる」と説明する。首都高速道路会社は、十数カ所に及ぶ基地や管理用地などに、緊急資材の配置を完了させた。木伏氏は「仮に数十カ所の段差が発生しても対応できる準備は整った。初動時の応急対応だが、これによって1週間程度はしのげる。その間に具体の復旧ができる」と手応えを口にする。
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