日本建築学会(中島正愛会長)のグローバル時代に生きぬくことができる建築人の育成特別委員会は3日、大阪市北区の常翔学園大阪センターでシンポジウム「海外事業を推進する建築業界に求められるグローバル人材像」を開いた=写真。グローバル社会で活躍するためのヒントやコツについてゼネコン担当者が解説し、参加した学生、教職員ら約130人は熱心に耳を傾けた。
冒頭、西谷章委員長は「これから、グローバル時代を生き抜いていかないと厳しくなるのだが、最近の学生はどうも内向きな人が多く、危機感を感じてこの委員会を立ち上げた。自国の立場や技術をアピールし、海外クライアントとうまく渡り合う能力が必要になってくる。実情をよく知り、生き抜ける人材になってほしい」とあいさつした。
シンポジウムでは、鹿島、清水建設、大林組、大成建設、竹中工務店(発表順)の各海外事業担当者が事業展開や自身の歩みなどについて解説した。
鹿島の日比純一氏は、海外の工事現場の様子を紹介し、「やることは国内とそれほど変わらないが、作業員の多くは現地で調達するため、人種や宗教、能力をよく把握しておかなければならない」と注意点を説明した。また語学力について「TOEICの高得点は必要ない。人種によって言葉の癖がある。英語の精度より伝わることが肝心だ」と述べた。
続いて清水建設の黒田和彦氏は海外事業の系譜や戦略、設計事情を説明し、「海外で最も求められる能力は『設計が好き』なことであり、語学はキャリアを積む中で身に着いてくる」とアドバイス。学会には「企業が海外勤務を希望する人材を見つけられるプラットフォームをつくってほしい」と要望した。
大林組の佐竹浩氏は、同社の海外事業展開や駅舎、競技場、高層ビルといった自身の海外勤務時の設計事例などを紹介し「日本より規模が大きな物件を比較的若いころから任せてもらうことができる。責任は重大で大変だが、やりがいが大きい仕事だ」とメリットを語った。
大成建設の服部光宏氏はこれまでかかわった海外プロジェクトを紹介し「入社当時はTOEICの点数は低かったが、海外で仕事がしたかったので10年間努力した。海外では、苛酷な環境で耐え抜く忍耐力が必要だ。努力すれば必ず報われる」と声を掛けた。
竹中工務店の山口広嗣氏は同社の歴史や海外での事業展開を説明し、「海外でモノをつくるということは、人と人との関係をつくるということ。建築に対する好奇心と探究心、匠の心が必要だ。海外には無限の可能性がある。ぜひチャレンジしてほしい」と訴えた。
中島正愛会長 |
最後に、中島会長は「海外への興味はひょんなことから湧き上がる。その『ひょん』な出会いの頻度を少しでも増やすため、シンポジウムを企画した。日本でグローバルはまだマイノリティーであるが、裏を返せば1番になれるチャンスがあるということ。1人でも多くの学生が海外に目を向けてくれることを期待している」と呼びかけた。
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