2016/12/18

【熊本地震】支援輸送の拠点・熊本空港の震災対応と復旧工事 17年1月の工事完了目指す


 4月14日と16日に最大震度7の地震が襲った熊本県。8000棟を超える住宅が全壊、311の公共施設にも被害が及んだ。新幹線と高速道路がすぐに使用できない状況で、復旧支援に大きく貢献したのは益城町にある熊本空港だった。支援輸送の拠点となり、19日には民間航空機の旅客便運行も再開した。現在は、ターミナル閉館後だけでなく昼間の時間帯にも工事を進め、2017年1月の復旧工事完了を目指す。写真は国内線ターミナルビルと管制塔

 空港施設を運営する熊本空港ビルディングは震災当初、施設外に対策本部を設置し、対応に当たった。新幹線や高速道路など線で結ぶルートが使用できない状況で、点と点を結べる空港を早期に再開するため、4月19日朝からターミナル内を使用しない運用方法で到着便の受け入れを開始。午後にはターミナル内の安全経路を確保し、便数を制限して出発便も再開した。また、同社では、今回の地震を教訓とするために「熊本地震の記録誌を作成している」(村田信一社長)とし、今回の被害を総括し、次の災害に備える。
 熊本空港の国内線旅客ターミナルビルは1971年3月に竣工。RC・S造4階建て延べ2万2590㎡。これまで4回の増改築を行っており、各工事で増築した構造体間のエキスパンションジョイント部などに被害が見られた。83年3月に竣工した国際線旅客ターミナルビルはRC・S造2階建て延べ5333㎡。荷捌場犬走り土間などが破損した。88年9月竣工の貨物ビル(S造平屋建て2棟計2118㎡)はシャッターの破損や地盤沈下に伴う段差が生じた。同社は復旧に関連する工事費を二十数億円と想定している。
 復旧工事は、迅速化を念頭に国内線旅客ターミナルビル5期工事を担当し、本震直後から安全点検・緊急対応工事を実施している大成建設と九電工が担当している。5期工事の設計者である日建設計はコンサルティング業務を随意契約し、被災状況調査、施工図、工事計画の整合性などの確認、発注者・施工者への技術的助言を行っている。

梁をジャッキアップした上で、増し柱で補強する

 国内線旅客ターミナルビルの構造躯体部で損傷が大きかったエキスパンションジョイント部は、梁がずれて28カ所で床が下がったため、増し柱をして補強する。まず、梁をジャッキアップし、床レベルの不陸調整と既存の架構状態に戻す作業を行う。既存のS造ブラケットを撤去し、RC造増し柱ブラケットを新設。損傷のないS造ブラケットは施工アンカーとS造ブラケット部の応力負担がないように下部にRC造増し柱で支持する。RC造増し柱は、既設コンクリート建築物を補強・増設するための鉄筋挿入・定着工法「Post-Head-Anchor」(ポスト・ヘッド・アンカー)を採用した。

滑走路に被害はなかった

 滑走路や誘導路、エプロン(駐機場)などの基本施設には大きな影響がなく、発災直後から運用が可能だった。管制塔も本震で大きく揺れたが、躯体に影響はなく、県の防災エプロンや小型駐機場などへ支援機を受け入れた。熊本空港事務所では、全国の官署から支援要員延べ426人の派遣を受けて、4月28日までは24時間運用態勢、7月28日までは運用時間外でも2時間以内の即応態勢で災害復旧への支援に当たった。
 国土交通省大阪航空局熊本空港事務所の松原悟空港長は「空港はもちろん、熊本全体の復旧に向けて、空港事務所も一助となるように取り組んできた」と述べた。現在は地震対策要領を見直し、安否確認や2次災害の防止を徹底する。
 熊本地震は余震を含む複数回の地震動が想定外の被害を生む結果となった。熊本空港にあっては、市街地から空港へ至る道路が健全であり、被災当初から大成建設、九電工が現地で対応に当たられたことが早期復旧の大きな要因となった。今後どういった地震が発生するかを予測することは困難だが、頻発する大規模地震に備え、あらゆるケースを想定した災害対応が求められる。
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