施工の効率化や維持管理の高度化などを目的として、土木分野でCIM(コンストラクション・イン
フォメーション・モデリング)の活用が進んでいる。地域の建設会社にとってはコストや人材確保などの観点から3次元モデル作成へのハードルは高い。そこで現場の施工状況を映像で記録することで情報化施工を推進する「valueCIM」の取り組みに注目が集まっている。システムの開発を手掛けた環境風土テクノ(東京都中野区)とトライポッドワークス(仙台市)、映像CIMの導入を始めている可児建設(愛知県小牧市)などによる産学連携の開発研究会も組織され研究開発が着実に進む。システム結合などのインテグレーションを担当する日本マルチメディア・エクイップメントの高田守康代表取締役は「今後のインフラ維持管理のため、できるところから始めていくことが重要」と力を込める。写真は見学会の様子
システムは屋外用の監視カメラや映像解析サーバー、ネットワークビデオレコーダー、発電機などで構成される。施工現場にカメラを設置し、工事開始から終了までの作業全般を撮影することで、品質情報の透明化を実現する。カメラを始め機器類はネットワーク接続されており、遠隔地からリアルタイムで施工現場を確認できる。発注者とも映像情報を共有できるため、問題の早期解決や工事現場の見える化につながる。
定点カメラで施工状況を記録 |
特徴は動画の「タイムラプス」機能だ。1秒当たりのコマ数を減らして撮影することで、長時間の映像でも短い時間で振り返ることが可能となる。8時間の映像は約30秒で確認できるため、朝礼で前日の作業を振り返るなどの使い方もできる。動画の容量も軽量化され二次利用などの取扱いがしやすく、施工情報を会社の知的財産としてデータベースに蓄積することも可能となる。
valueCIMは道路舗装の現場として初めて、愛亀(松山市)が施工する愛媛県の大島と伯方島を結ぶ大島大橋の舗装補修工事現場に導入された。従来は写真で確認していた不可視部分での品質証明や工事現場の見える化、リアルタイム監視による不安全行動の指摘・改善などの安全管理、技術継承への活用を見据えた映像の知的財産化などが狙いだ。
現場は60mごとに工区が3分割された計180mで、全体の工区の両端にカメラを2台設置した。もう2台を施工中の工区の両端に置き、工事中は日々、開始から終了まで現場の様子を撮影した。
当初、工区全体の両端に設置したカメラは施工現場全体の記録を目的としていた。しかし、発注者の本州四国連絡高速道路会社から「車線規制の状態を管理してほしい」と要望があったため、カメラを外側に向けて設置し、車両の通行状況を確認するなど安全管理に活用した。高田氏は「安全管理でも映像を記録することが欠かせない」と話す。
ネットワーク接続により遠隔地での映像確認も可能だ |
10月には同研究会の現場見学と取り組みの中間報告が実施された。愛亀からは「見られているため、丁寧な作業を心掛ける意識が向上した」「安全について注意することが少なくなった」「発注者とのコミュニケーションがよくなった」などの現場の声が報告され、一定の成果を上げていることが確認された。高田氏は「中小企業にとってCIMは敷居が高いが、何らかの記録を残していかなければならない。さまざまな活用のバリエーションがあるので、今後はより利便性が高まるのではないか」と展望を明かした。
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