西松建設は8日、福岡県久留米市の天建寺橋を対象に、佐賀大学と共同開発した斜張橋の斜材保護管調査ロボット「コロコロチェッカー」をデモンストレーションした=写真。国土交通省九州地方整備局や佐賀県の職員のほかコンサルなどの民間企業ら計60人が、調査ロボットを見学した。
斜材保護管の調査では、高所作業車を使って人が目視で行っており、安全のために車線を全面封鎖する。高所作業車より高い部分は双眼鏡などの遠望目視でしか調査できず、正確な調査ができなかった。
このシステムは、斜材保護管に設置したコロコロチェッカーを遠隔操作により管上を走らせ、搭載した4台のフルハイビジョンカメラで1mm以上の損傷状況を録画し、その映像を損傷度合いごとに自動分類する。本体は1辺500mmの立方体で重量は30㎏。分速5m(傾斜角40度時)で2時間以上動き、バッテリーを交換しながら1日4、5本の斜材を調査できる。管の太さは一般的な斜張材保護管の90mmから230mmに対応する。
開発は佐賀大大学院の伊藤幸広教授とともに2011年から始まった。12年8月から10月にかけて東名足柄橋補修工事で初めて稼働し、人による近接目視と同程度の調査能力が認められた。その後も改良を続け、14年下期から調査映像の解析システムの開発に着手。15年11月に新那珂川大橋で試験し、16年3月に現在の2号機が完成した。改良により、移動速度が2倍となり、約1カ月を要したデータの解析を1週間もかからず終わらせる。
久留米市の天建寺橋でデモ点検 |
当日のデモでは、西松建設の岩永克也技術研究所所長らが参加し、約70mの斜材保護管に付けたコロコロチェッカーを河川敷に設置したパソコンで遠隔操作する様子を紹介した。パソコン画面に移動速度や現在位置のほか、カメラ4台のリアルタイムの調査映像が流れた。参加者は「途中でバッテリーが切れた場合はどうするのか」といった質問を挙げ、「ロボットに取り付けたひもで回収する」と西松建設の担当者らは回答した。
伊藤教授は「これまで自走して調査するというアイデアも技術もなかった。15年度に国土交通省点検要領の見直しで全部材の点検が必要になったことで橋梁の延命化につながる新技術をつくるいい機会となった」と話した。
今後の課題として人件費や工期短縮のために移動速度を上げることや障害物がある場合の対処法を挙げており、カメラの性能向上やロボットの小型化などの方策を検討している。
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